演歌歌手の木村徹二(32)が19日に、都内で初の単独ライブを開催した。徹二は、「兄弟船」で知られる歌手鳥羽一郎(71、本名・木村嘉平)の次男。昨年11月に、鳥羽との師弟関係をイメージさせる「二代目」でメジャーデビューした。同曲の作詞作曲は、シンガー・ソングライターとしても活動する長男の木村竜蔵(34)で、まさに親子作品として注目されている。

徹二には日本レコード大賞など年末の賞レースで、新人賞の資格がある。徹二は「小さいころから目標を言うと、実現しなかった。だから意識しても言わないようにしようと決めています(笑い)。ただ、僕は兄の楽曲を信頼しているし、センスはいいと思っているので、楽曲の評価が上がってくれればうれしい」と謙虚に話した。

徹二が願うように楽曲が評価されれば、兄の竜蔵にも作詞賞、作曲賞のチャンスがある。日本レコード大賞で、兄弟の同時受賞となれば史上初の快挙だ。

かつて鳥羽の実弟の山川豊(64)が「函館本線」で、第12回日本歌謡祭(81年)で近藤真彦(「ギンギラギンにさりげなく」)とともに優秀放送音楽新人賞を獲得した。レコ大で言えば最優秀新人賞に当たる賞で、2名が選ばれていた。

受賞者の発表で、山川の名前が呼ばれると、会場にいた兄の鳥羽が警備員を振り切ってステージに駆け上がり、弟に抱きつき、涙で祝福した。鳥羽はまだ作曲家・船村徹氏の弟子の立場で、まだデビューしていなかった。当時を思い返して、鳥羽は「今思うと、あれは犯罪ですよ(笑い)。すみませんでした」と語っている。

鳥羽は翌年の82年に「兄弟船」でデビューし、全日本有線放送大賞、メガロポリス歌謡祭などで新人賞を総なめにした。もし徹二が新人賞を獲得すれば、親族3代で新人賞を受賞することになる。さらに竜蔵も受賞すれば、父、叔父、兄弟の鳥羽ファミリーが賞を獲得するという、まさに快挙となる。

山川は「新人賞は(自分の力だけでなく)大勢の方のおかげ。賞を獲得したことで曲(のヒット)は一層爆発した。本人は言わないと言っているが、僕は出てほしいと思う。それがスタッフや関係者への恩返しじゃないかなと思います」と話している。

鳥羽は「もう(徹二に)アドバイスはありません」と語るが、本心は「頑張ってほしい」と願っているはずだ。もし徹二、竜蔵のどちらかでも受賞となれば、山川の時のように、ステージに駆け上がって祝福するシーンを見たいものだ。【笹森文彦】