日本映画製作者協会が主催する新藤兼人賞授賞式が8日、都内で行われた。相模原市で実際に起きた障がい者殺傷事件をモチーフにした作家・辺見庸氏(79)氏の小説を映画化した「月」を企画した、前KADOKAWA会長の角川歴彦氏(80)がプロデューサー賞を受賞した。

角川氏は、東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、受託収賄罪で起訴された大会組織委員会元理事の高橋治之被告(79)に、約6900万円の賄賂を渡した贈賄容疑で22年9月に東京地検特捜部に逮捕され、同10月に贈賄罪で起訴された。その後、7カ月あまり拘留され今年4月に保釈保証金2億円を全額納付し、保釈された。「尊敬する大先輩の名を冠した賞を頂き、非常に感動しております」とあいさつした。一方で、保釈中の身の上を踏まえ「僕は今、晴れがましい場所に出て良いのか、あるいはこういう賞を受賞していいのか、ということを逡巡しました」と、複雑な心情ものぞかでた。

「月」は、角川氏が映画製作会社スターサンズ前代表の河村光庸さんとともに映画化を進めていた。ところが、22年6月に河村さんが心不全のため急逝し、角川氏が逮捕され、同11月にKADOKAWAの取締役を辞任。その後、同社は製作及び配給から撤退し、スターサンズが単独で配給し、10月13日に全国で公開された。石井監督は同14日に都内で行われた公開記念舞台あいさつの檀上で「一時は完成及び劇場公開すら危ぶまれました。ここに立つということが、とても特別な気持ちというか、いつもとは違う幸せな気持ちと誇らしい気持ちでいます」と、KADOKAWAの撤退で完成、公開の危機に立たされていたことを明かした。

日本映画製作者協会の押田興将代表理事から「中止、表現が制限されるとかいろいろな事があった中で、監督を守り、公開し、結果を出す…見習いたい。角川さんの名前が出た時、おっ、となったが盛り上がった贈賞させて頂きたい」と高評があると、角川氏は笑みを浮かべた。「選考してくださった選考委員の皆さまの粋な配慮と、大いなるおとこ気に感謝して喜んで受賞させて頂きます。僕は、一介の素浪人。僕の履歴書は白紙のままですから…今日は1行、付け加えることが出来ると、心から思います」と喜んだ。

東京国際映画祭コンペティション部門に出品された「曖昧な楽園」の小辻陽平監督が金賞、「わたしの見ている世界が全て」の佐近圭太郎監督が銀賞を受賞した。