音楽家長渕剛(56)が20日、東京・表参道ヒルズで、詩画を描く公開パフォーマンスを行った。

 この日から同所で始まった「長渕剛

 第五回詩画展2013

 殺気

 黒い血が流れる日」のオープニングイベントとして実施。シャツ1枚ではだしになった長渕は、約30キロの大筆を振り上げると「行くぞ、ソリャーッ、オリャーッ!」と大声で裂帛(れっぱく)の気合。鍛え上げた全身の筋肉を躍動させながら、4メートル四方の白い紙に筆をたたきつけ、黒く「殺気」と書き上げた。

 続けて紙の端に細い筆で、心の中のほとばしる思いをぶつけた文を一気に書くと、「命」という文字の赤印を押した。緊張感と迫力に、集まった多くのファンから、ライブ会場のような大声援と「ツヨシ」コールが沸き起こると、長渕は充実した表情で言った。「みんなと一緒に、思いをここに付着させたのがうれしい。集まった人たちと本気で気持ちをひとつにして作品を描き上げた。僕たちは仲間だ。そんな気持ちがこみ上げてきます」。

 長渕は、大筆を使って紙に詩と絵を描く芸術表現作品「詩画」を15年以上にわたって続けてきた。98年に第1回詩画展を開き、今回は05年以来の開催で、5回目。観客の前で公開実演したのは09年のイベント以来となった。

 今回の詩画展のテーマでもある「殺気」は、一般的な意味ではなく、長渕がさまざまなことを考え抜いてきた末の覚悟が込められた独特の表現という。

 長渕は詩画展の準備が明け方までかかりこの日、2時間しか寝ていなかったという。ただ、実演前、長渕は「今日、最高のパフォーマンスやるからね。みんなでエネルギーを集中させて気合を入れ、筆をたたきつけた瞬間、みんなで腹の底から声を出してほしい。心の中にある言葉を思い切り叫んでみよう。(詩画を)どう感じるかはその人の自由でいいと思う」と呼び掛け、観客と一緒に「シャー!」と気合を入れるリハーサルも実施し、本番前から会場の雰囲気が一体化していた。

 今回は、縦4メートル×横10メートルの自身詩画史上最大となる、宮城・石巻の被災地で見た2匹のこいのぼりを描いた「鯉のぼり」など100点以上が展示される。表参道ヒルズでは23日まで。今後6月までの間に名古屋、鹿児島、大阪、仙台で順次開催される。