日本で長年親しまれてきた人気アニメ「ドラえもん」が7月から全米で放映され、本格的に北米進出する。日本貿易振興機構(ジェトロ)などは20日、ロサンゼルス近郊でイベントを開催、放映に伴うビジネス機会の創出を後押しした。

 ドラえもんはアジアや欧州など約40カ国・地域で放映されているが、米国では初めて。その理由として、ドラえもんに依存するのび太のキャラクターが自立を重んじる米国の風土になじまないなどと指摘された。

 このため、ウォルト・ディズニーの子ども向けチャンネル「ディズニーXD」で7月7日から放映される26話のシリーズでは、米国の習慣や文化を反映してキャラクターを微妙に調整したり、設定を変更したりする修正が加えられた。

 親しみやすさを考慮し、のび太は「ノビー」と“改名”。「スー」と呼ばれるしずかちゃんが手にする人形は、性差を感じさせない日記に変わる。のび太のお小遣いはドル紙幣に、しずかちゃんの好物である石焼き芋の屋台はポップコーンの販売車になる。

 日本でドラえもんを放映したテレビ朝日によると、子ども向けアニメで暴力的、性的、差別的な描写を禁じる米国の放送基準により、ジャイアンがのび太を殴る場面やしずかちゃんの入浴シーンなどは短縮・削除される。健康的な食生活を推進する目的から、まんじゅうなどのおやつは果物に変更される。

 米国版プロデューサーのエリック・シャーマン氏は「一つの言葉を選ぶのに何週間も費やすこともある」と明かし「『日本の宝』といっても過言ではないドラえもんを預けてくださり本当に感謝している。魅力を最大限伝えられるようベストを尽くしている」とコメントした。

 20日のイベントには日系企業約80社の関係者が参加。ドラえもんの北米での浸透促進のため、飲食店でドラえもん関連のオリジナルメニューをつくったり、自動車の販売促進にキャラクターを使用したりするなどの提案が行われた。「藤子プロ」の篠田芳彦常務取締役は「大きな市場が未開拓だった。企業の枠を超えて北米の地にドラえもんを根付かせていただきたい」と話した。

 ◆ドラえもんの海外進出

 藤子・F・不二雄氏の漫画を原作とするアニメ「ドラえもん」はアジアや欧州のほか、中東や南米など幅広い文化圏で人気を呼んでいる。バングラデシュではヒンディー語で放映されていたドラえもんの人気が高まりすぎ、公用語ベンガル語の学習の妨げになるとして、政府が放映を一時禁止した。これまでに世界で放映されたドラえもんはセリフの吹き替えや字幕を施しただけで、日本と同じ映像が使用されたが、米国版は現地の文化や習慣を反映して映像を編集する「ローカライズ(現地化)」が初めて行われた。