【ニューヨーク10月31日(日本時間1日)=松本久】歌手高橋真梨子(59)が、同地のカーネギーホールで、デビュー35周年記念コンサートを行った。「音楽の殿堂」のステージに立つのは15年ぶり2度目だが、大ホールでは日本人初。ソロ転向30周年、バンドマスターも務める夫のヘンリー広瀬氏(64)と結婚15周年というトリプルメモリアルでも、気負いなく「楽しむこと」をテーマに歌声を響かせた。

 ダウンタウンはハロウィーンのオレンジ色をメーンに飾られていても、カーネギーの高橋のステージには過剰な演出は一切無かった。ソロとして約2300公演を重ね、570万人を動員。日本でチケット入手が難しいアーティストの1人に数えられる実力派は、卓越した表現力と歌唱力を前面に押し出すため、時にはバックの演奏音を落としてまで、ボーカルを際立たせた。「15年前は慣れない海外公演に緊張しすぎたから、今回は楽しんで歌いたかった。それがお客さんに喜んでもらえることにも通じるから」と歌うことを楽しんでいた。

 約2時間で24曲。「ジョニィへの伝言」「for

 you…」「はがゆい唇」…。ヒット曲に静まりかえった会場全体が耳を傾ける。一方で「not

 so

 bad」「グランパ」などアップテンポな曲ではスタンディングと大きな拍手に乗せられた。「長く歌手をやってきて本当に幸せです」。15年前のカーネギー公演をきっかけに生まれた英語曲「My

 Heart

 New

 York

 City」では流ちょうな発音も披露してみせた。何度も繰り返した「楽しんでくれていますか?」。日本や米国各地以外にフランス、タイ、インドネシアなど世界中から駆けつけたファンとともに心を1つにした。

 「また来年、カーネギーで会いましょう!

 と言いたいけど、私も年なので…。また来られるように頑張って歌っていきます」。ジョーク交じりの高橋の控えめの言葉を引き取るように、ペドロ&カプリシャス時代に出会ってから26年。前回はカーネギー公演で滞在中の現地で結婚を発表した広瀬氏は「結婚15年目のささやかなプレゼントができてよかった」と目を細めた。

 公演後、高橋は「お客さんが笑顔で終わってよかった」と安心しながら「でも、大成功という言葉は私にはないんです」と言った。ならば、3度目のカーネギーが目標になるのかの問いにもさらりと答えた。「神様が私を歌わせてくれるのなら。でも、石にかじりついてまでみたいなこだわりはないんです」。あくまで自然に音を楽しみ、観客を楽しませる。7日から国内公演が始まる。