甲斐バンドが活動を終えた。7日、「BEATNIK

 TOUR08-09

 THE

 ONE

 NIGHT

 STAND」の最終公演が東京・日本武道館で行われた。同バンドは86年に解散した後も、期間を決めて活動してきたが、22年ぶりに行った今回の全国ツアーで35年の歴史にピリオドを打った。甲斐よしひろ(55)は「バンドは終わっても曲は残りますから」と1万人のファンに次々ヒット曲をプレゼントした。

 武道館が数え切れないほどの光に照らされた。ラストソングは「100万$ナイト」。巨大なミラーボールがつるせない会場ではメニューをすべて変えてでも歌わない、こだわりの曲で35年の歴史に幕を閉じた。

 「きんぽうげ」で始まった最後の甲斐バンドは180万枚を売り上げた「HERO」などヒット曲の連続だ。甲斐と同世代を中心にした客席の誰もが歌い、叫び、手を打ち鳴らした。

 ギター田中一郎(54)は「甲斐バンドは自分の部屋」と言った。ならば通算21度目の武道館はわが家なのか。松藤英男(54)もドラムにギターにボーカルにと、最後なのに気負いのない円熟味のある演奏が続いた。

 「甲斐バンドがいい」。全国のツアー会場でファンやイベンターがそうささやいた。かつては暴動寸前までヒートアップしたファンを前に甲斐は「お前らまるくなったな。ホント、自然に楽しんでくれてるな」と笑みを浮かべた。

 絶頂期からバンドを支えたメンバーや裏方が顔をそろえた今回のツアーも、当時より成熟していた。だからこそ、甲斐は「最後の甲斐バンド」だと決めた。メンバーもスタッフも個人活動に戻れば、それぞれの分野で責任ある立場にある。04年にはギター大森信和氏を亡くした。最高のメンバー、スタッフが集まれる機会は奇跡でもつくれない。

 86年に日本武道館で解散以後、過去4回、期間限定や一夜限りの復活を果たしている。それでも甲斐は「最後になるのは、今回集まった瞬間に全員が感じていた。それに、バンドはなくなっても曲や作品は残るから」と断言する。

 いよいよ解散だ。感傷的になる周囲をよそに甲斐が笑う。「『甲斐さん』は僕です」。つまらない駄じゃれも成熟の証明。甲斐バンドが輝いたままステージを降りた。【久我悟】

 [2009年2月8日8時25分

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