歌手吉田拓郎(62)の「最終章」がスタートした。NHK衛星第2「大いなる明日へ~復活!吉田拓郎~」(22日午後7時半)の収録を同局スタジオで行った。すでに6月からのツアーが最後の全国ツアーとなることを宣言しているが、同番組はその前に「ファンに元気な姿を見せたい」と自ら企画したもの。07年に体調不良でツアーを中止して以来、1年5カ月ぶりの歌声だった。

 23人編成のビッグバンドをバックに拓郎は歌い続けた。3時間を超える収録にも疲れは見せない。演奏後のインタビューでは「楽しかった。最終章へ、うまくいってよかった」。晴れやかな表情で、あえて「最終章」の言葉を口にした

 病気との闘いだった。03年4月に肺がん手術。翌年には全国ツアー中に貧血で倒れた。その後、再復帰を果たすも、07年10月に体調不良で再びツアー中断。画面越しとはいえ、ファンに歌う姿を披露するのは1年5カ月ぶりだ。がんを告知される直前、同じスタジオ、同じバンドでライブ演奏を行った。「だからここから(復活劇を)始めることは必然なんです」と話した。

 今年を最後に、全国ツアーから撤退する。その決断に至った理由も言葉を濁すことなく告白した。「100%の体調にはもう戻らないだろう。今の体力を考えると、全国という規模でスタッフを組んで行く肉体的なリスクにはもう耐えられないと思う。自分が終わったら、全スタッフに迷惑がかかる。すべて僕の肩にかかってる。それはちょっともう無理だなって。精神的にも」。

 だからこそ、けじめの意味も込め、最後のツアーにかけている。6月21日の名古屋を皮切りに9都市9公演。来月発売するニューアルバムでは、25年ぶりに新曲10曲すべて、作曲だけでなく作詞もこなした。この日、初披露した「ガンバラないけどいいでしょう」などメッセージ色の強いものとなっている。

 「(今夏で)すべてが終わってしまうということでは全くないし、僕は音楽のそばにずっといたい。まだやり足りないものもある。それをやるためにも、ツアーはもういいという気持ちなんです。音楽はやり続けていきたい。人生終わるまで」。自ら口にした「最終章」。それは新しい拓郎の始まりの宣言でもある。

 [2009年3月12日7時56分

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