お笑い“ゲイ”人の前田健(37)が初小説「それでも花は咲いていく」(幻冬舎)を19日に発売する。自身がセクシュアルマイノリティーであることから、その目線と感受性を生かし、特異な性的嗜好(しこう)を持った9人を描いた。ロリコン、女子色情症、マザコン、SM…。単なる娯楽作品で終わらせず、心に突き刺さるような自問自答を主人公にさせ、「人とは何か」「生きる意味は」と読む者に問いかける。

 「神さま-。僕は病気ですか?

 僕はゴミのように燃えてなくなればいいですか?」。これはロリコン男を描いた「エーデルワイス」の主人公のセリフ。「人々の固定観念の枠を取り払って、偏見の少ない世の中を作ることの手助けをするのが自分の使命だと思っている」と話す前田の叫びが凝縮された言葉だ。小説のテーマを模索していた時に「自分にしか書けない作品」と、自然にセクシュアルマイノリティーを選択。書き進めるのは苦しい作業だったが「作品という子供が生まれるうれしさもあった」と振り返る。

 小説を書くことは「自己救済」だという。05年にカミングアウトした自分をさらけ出すことで、読者に理解はされなくても認識してもらえるという。「小説は主人公の目線に疑似体験できる楽しさがあります。それが悲しみであっても…。そこが見どころです」。どんな人に“疑似体験”をしてほしいか聞くと「もちろんすべての人。特にと聞かれれば、変態に対して嫌悪感のある方々」と答えた。

 花は1度枯れても季節がくれば再び咲く。たとえ他者に理解されない性癖を持ち合わせても「それでも前向きに生きていく」。そんな思いを小説のタイトルに込めた。

 [2009年3月13日7時2分

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