<第12回日刊スポーツ・ドラマグランプリ受賞者発表>

 2008年度(08年4月~09年3月)に放送されたドラマから優秀作品、俳優を選ぶ「第12回日刊スポーツ・ドラマグランプリ」の各賞受賞者を27日から発表します。トップバッターの主演男優賞は、TBS系「魔王」で嵐のリーダー、大野智(28)が初受賞しました。連続ドラマのレギュラー出演が初めてで、もちろん初主演。復讐(ふくしゅう)に燃える孤独な男をクールに演じ切りました。

 孤独な復讐鬼、成瀬領を演じ切った大野が涙を流したのは、たった1人での自宅だった。

 大野

 泣くなら、クランクアップや打ち上げのときかと思ってたんですよ。それが、すべての撮影を終えた日の朝4時ごろだったと思います。帰ってきた自分の部屋で、自然と涙が出てきちゃいました。

 孤独な弁護士役で、1人での撮影が多かった。役づくりのために、撮影の合間も極力1人でいることにこだわった。「終わったことへの安心感や、周囲の人への感謝とか、いろんな感情が重なっての涙かなと。それにしても、最後の最後まで1人でしたね…」。

 連続ドラマレギュラーが初めてで、いきなりの主演。しかも、感情を押し殺して演じるサスペンスでの悪役だった。「最初はエーッ、オレが連ドラ?

 ってびっくり。しかも、11年も復讐を計画していた役。日常生活で復讐なんて練らないんだから、役づくりにも11年くれよ~って感じでした」。

 撮影に入ってからも苦しい毎日だった。舞台経験は豊富でも「舞台と違って、ドラマは脚本の順番通りじゃなくバラバラに撮る。慣れないことでした」。撮影のリズムすらつかめないのだから、役に没頭するしかない。結果的にどんどん孤独を極めたという。「一日中、赤い暗室で1人だけのシーンを撮って、家に帰っても独りぼっち。もう、狂いそうでした」。

 その上、夏のコンサート、24時間テレビの司会、何本ものバラエティー番組と、嵐の仕事も山積みで、デビュー以来最も多忙な時期だった。「当時のことを、あんまり覚えてないんです」。ただ、主人公が徐々に感情をあらわにしていく後半は、くしくも追い込まれた大野自身の心情を、リンクさせることができた。「役柄同様に、自分の役も相手の(生田)斗真の演技すらも、手の中で動いてるって実感することができた」。ドラマの現場に慣れない当初は、泣くシーンで涙が流せなかった大野が、100%成瀬領に染まっていく…。最終話の生田とのラストシーンは、感情をぶつけあい、涙があふれ出したことで、名シーンに仕上がった。「あのときはもう斗真の顔以外は、視界に入っていませんでした」。

 無我夢中だった日々と、でき上がった作品を今、あらためて振り返る。「不思議ですよね。1年前はこんな状況を想像できなかった。いい経験ができて、多くの人に出会えて、僕の中の宝物が増えました。終わった後に斗真とも電話で話したんですけど、やってよかった。うん、とても満足してます」。【瀬津真也】

 ◆大野智(おおの・さとし)

 1980年(昭55)11月26日、東京都生まれ。99年(平11)に嵐のメンバーとしてシングル「A・RA・SHI」でCDデビュー。今年1~3月は、テレビ朝日系「歌のおにいさん」にも主演し、演じる矢野健太として歌う主題歌「曇りのち、快晴」が初のソロ曲となった。絵画、オブジェ、写真などで個展を開くなど、芸術センスも光る。166センチ。血液型A。

 [2009年4月28日16時59分

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