【ロサンゼルス25日(日本時間26日)=千歳香奈子通信員】「スリラー」「BAD」など多くの世界的ヒット曲で知られ、キング・オブ・ポップと呼ばれた米歌手マイケル・ジャクソンさんが午後2時26分、市内の病院で死去した。50歳だった。マイケルさんは同日、市内の自宅で心不全の症状で倒れ病院に搬送されたが、帰らぬ人となった。事件性はないが詳しい死因が不明で、26日に検死局で解剖が行われる。晩年はスキャンダルが話題に上ることが多かったが、7月の復活コンサートで再び歌い踊る姿を、多くのファンが待っていた。

 マイケルさんは昼すぎに心不全とみられる症状で倒れた。弟ランディが救急車を呼び、心肺停止、呼吸ができない状態だったため、その場で42分間、蘇生(そせい)措置が施された。自発呼吸、意識を取り戻すことはないまま午後1時14分、カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)付属病院に搬送され、さらに蘇生措置が行われたが、同2時26分に死亡確認された。

 病院では、マイケルさんがデビューした兄弟5人のユニット、ジャクソン・ファイブのメンバーでもある兄ジャーメインが会見した。声を震わせ「弟であるキング・オブ・ポップのマイケル・ジャクソンは死去しました。つらいです」と絞り出した。

 死因は明らかになっていない。遺体は夕方になってヘリコプターでロサンゼルス郡検視局に搬送された。26日午前にも行政解剖される予定。警察は事件性はないとしているが「死因が特定されていない」として捜査を始めた。

 突然の死に家族も混乱している。姉ラトーヤが泣きながら病院を走っていた。妹ジャネットら兄弟たちは、ロサンゼルス郊外の両親の自宅に集まっており、関係者の出入りはあるものの、静まりかえっている。

 今年初めから体調は思わしくなかった。2月には抗生物質の効かないメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染し、菌が全身に広がっていると報道された。鼻の整形手術の時に感染した可能性が指摘された。ジャクソン家の代理人は「ここ数カ月は特に体調が悪く、家族が付きっきりだった」と話した。

 さらに5月には、皮膚がんを患っているとの報道もあった。元弁護士がマイケルさんの家族に、処方薬を服用しすぎていると指摘したこともあった。感染症や皮膚がんの痛みを抑えるための痛み止めを過剰摂取し、心臓に負担がかかった可能性もある。付き人は病院で「デメロールを注射した後、呼吸が止まった」と説明したという。デメロールは強い痛み止めで、救急医療などで使われている。

 それでも、マイケルさんは7月のロンドン公演に向けて意欲を見せていた。倒れた自宅は、ロサンゼルスでリハーサルを行うために借りた。ステージから落ちて脊椎(せきつい)骨や足を骨折したと話す関係者もいるが、前日は市内のアリーナ「ステープルズセンター」でのリハーサルに参加。当初予定から公演初日は5日延期されたが、医師の検査もパスし、本番に備えていた。

 公の場に姿を見せたのは、3月に行った公演に関する発表会見だった。スキャンダル報道が先行した晩年だったが、こぶしをつくって「僕は歌いたい歌を歌うよ」という言葉をファンは最後まで信じていたが、かなうことはなかった。

 [2009年6月27日8時18分

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