人気漫画「クレヨンしんちゃん」の作者臼井儀人さん(51)が行方不明となり、家族が捜索願を出していることが16日、分かった。埼玉県警春日部署によると11日朝に群馬・長野県境にある荒船山(標高1422・5メートル)に登ると家族に告げて家を出た後、そのまま戻っていないという。近所の住民によると、臼井さんが入信している新興宗教をめぐって、同居する母親ともめることがあったという。埼玉県警から情報提供を受けた群馬・長野の両県警が行方を捜している。

 春日部署によると、臼井さんは11日朝に「夕方には戻る」と妻に告げ、春日部市内の自宅から軽装で出掛けた。ところが夜になっても戻らず、連絡が取れないため、翌12日に妻が捜索願を出した。臼井さんは出掛ける前に「(群馬・長野県境にある)荒船山に登ってくる」と話しており、群馬県警は遭難の可能性もあるとみて登山ルートを中心に捜索している。荒船山は長野県側から入山するのが一般的で、埼玉県警では長野県佐久市内などに立ち寄った形跡がないかなど、長野県警に情報提供を求めている。長野県警は駅やレンタカー会社に聞き込みを実施し、県境付近にヘリコプターを出すなどして行方を捜している。

 またこの日までに荒船山に近い軽井沢付近で携帯電話の電波が確認されているが、有力な目撃情報などは得られていないという。臼井さんは登山が趣味で、頻繁に出掛けていたという。

 この日、母親は臼井さんについて「妻に聞いてください」とだけ話したが、夜に帰宅した妻は無言のままだった。母親は知人に「息子はもう生きていないかもしれない」などと話し、心配していたという。

 近所住民によると、臼井さんと妻は同じ新興宗教の熱心な信者で、多額の寄付も行っていたという。自宅の隣にはその宗教施設もあり、「土地も臼井さんが提供したと聞いている」と話した。別の住民は、この新興宗教をめぐって、入信を反対する母親と臼井さんが「たびたび口論になっていたようだ」と話した。家族間にあった不和が原因で、家を出た可能性も考えられる。また別の住民は「大変な人気作品を抱えており、行き詰まって気晴らしに出掛けたのではないか」などと話していた。

 連載中の「まんがタウン」を発行する双葉社の担当者も心配している。担当者は「旅行の際にはいつも行き先を教えてくれた。連絡が取れなくなったのは初めて」と話した。最後の電話連絡は、行方が分からなくなる2日前の今月9日。観劇した舞台の感想などを話していたという。連載用の原稿は数カ月先のものまで出稿されており、休載の予定はない。

 臼井さんは人気漫画家だが、メディアには一切登場していない。「クレヨンしんちゃん」が絶大な人気を獲得したこともあり、「夢を売る仕事なので自分はマスコミに出ない方がいい」と露出を控えている。連載が始まって10年後の00年には納税額が約2800万円を超える高額納税者でもある。

 [2009年9月17日8時39分

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