歌手松山千春(54)が、今月いっぱいで49年の歴史に幕を閉じる東京・新宿区の東京厚生年金会館のファイナル公演を務めることが3日、分かった。29日の公演に向け「おれを育ててくれた場所のために思いっきり歌いたい」と声を張り上げた。

 同会館は61年4月、社会保険庁が厚生年金保険加入者の福祉増進を目的としてオープン。だが、赤字補てんに税金が使用されているなどと批判が高まり、営業終了が決まった。2月に行われた入札では、ヨドバシカメラが120億円で落札。新たな複合型商業施設として生まれ変わるという。隣接する別館は別の企業が落札し、分譲マンションを建設する予定だ。

 全国に21施設ある厚生年金会館の顔として、また新宿地区で数少ない大規模公共ホールであることから、施設存続を求める声が多数寄せられた同会館は「最後は気持ちのある人に公演をやってもらいたい」と熱望。「気持ちのある歌手」として千春に白羽の矢が立った。デビュー2年目の79年4月、東京での初ステージが同会館だった。

 31年で積み重ねてきた73回公演は、さだまさしの174回、高橋真梨子の117回に続き歴代3位。公演の際には必ず事務所に立ち寄りあいさつを欠かさないほど、同会館に恩義と愛着を感じている。「東京に限らず、厚生年金会館はそれぞれの土地で文化や芸能の交流の場になっていただけに閉館は残念」と公言する千春だけに、万感の思いでデビュー以来の“友”の有終の美を飾るつもりだ。チケットの一般発売は13日から。1人1枚限定となっており、早くもプラチナ化が予想される。

 [2010年3月4日8時34分

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