AKB48選抜総選挙の大本命だった前田敦子(18)は、まさかの2位に終わった。09年はトップ当選で、今回の速報、中間結果でも1位を独走していたが、大島優子(21)の最後の猛烈な追い込みを受けて逆転を許した。それでも、堂々とスピーチに立ってリベンジも宣言した。

 ほぼ誰もが予想していなかった結末に、会場は一瞬静まりかえり、直後に大きくどよめいた。前田だけは、小さな笑みを浮かべて、ステージに上がった。

 前田

 皆さん本当にありがとうございます。私は負けず嫌いなので、正直悔しいです。でも実は、少しだけホッとしている自分がいます。

 本音がこぼれた。さらに「私はやっぱり1位という器ではないと思います。去年1位をいただけた後に、AKBを引っ張っていかなきゃいけない立場だと思ったんですけれど…(泣)。私にはうまくできなかったみたいです…」と続けた。絶対的エースとして重圧と向き合ってきた孤独な思いが、ポロポロとあふれてきた。09年は、アンチ前田ファンから心無いヤジも飛んだが、この日は「あっちゃん、そんなことないぞー」「頑張ってたよー ! 」と、温かい声援ばかりが降ってきた。涙をこらえ、言葉を詰まらせた。

 09年の当選スピーチで「私はAKB48に自分の人生をささげるというのを決めています」と誓うと、その後は今まで以上に強い責任感が芽生えた。5月27日のチームA解散公演でも「新チームAでは、私もキャプテンたかみな(高橋みなみ)を支えて、皆を引っ張っていきたい」と宣言。引っ込み思案な女の子が、大黒柱として、有言実行するほどに成長していた。だからこそ、最後は「もしリベンジできるのであれば、次は、胸を張って堂々とメンバーを引っ張っていける存在になろうと思います」と約束した。話し終えて席に座ると、親友板野の胸に泣き崩れた。18歳の少女には非情な、敗退演説だった。

 “前田首相”は、前回総選挙からの1年間で、AKB48を国民的アイドルグループにまで飛躍させた最大の功労者だ。同じ昨夏に指名されながら、国民からの支持率を落として辞任した鳩山由紀夫前首相とは違い、結果を残してきた。政権交代する理由が何ひとつなくても、入れ替わることもある…。アイドルの、AKB48の過酷さを知らしめる一夜だった。

 [2010年6月10日8時55分

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