合成麻薬MDMAを一緒に服用した女性を救命しなかったとして、保護責任者遺棄致死罪などに問われた俳優押尾学被告(32)の裁判員裁判の第2回公判が6日、東京地裁で開かれた。この日は検察側証人6人が出廷。元交際相手が押尾被告から「愛が深まる」などとして、性行為前に薬物を勧められたと証言した。第3回公判は7日に行われる。

 押尾被告の異常な「薬物セックス」の実態が、女性証人によって白日の下にさらされた。検察側の証人として出席した元交際相手のKさんとEさんは、別室からモニターを通して証言したが、ともに同被告から勧められたMDMAを飲んでセックスし、体調を崩したと明かした。

 Kさんは03年1月にハワイで押尾被告と出会い、月1ペースでセックスをする関係になった。08年6月に同被告から「愛が深まるものがある」とメールが来た。六本木のマンションで会うと青と白の錠剤を見せられ、白の錠剤を飲むと「歯を食いしばって汗が出て肌が敏感に」なり、セックス後も吐き気がしたという。

 その後、2度会った際も「アレ、いる?」とメールが来たが「薬だと思い、いらないと答えた。アレと言う表現はセックスで使うことはないと思う」と答えた。今回の事件では、押尾被告の「来たらすぐいる?」という田中さんへのメールが、薬物と同被告の陰茎のどちらを指すかが論点となっており、その核心を突く証言となりそうだ。

 次に証言したEさんは、昨年2月に押尾被告と出会い、同3月に同被告が仕事で渡米したロスに行くと、同14日に同被告から「エクスタシー」だと言って渡された、オレンジ色のMDMAを初めて飲んだ。同17日にはオレンジと、薬効の強い青の錠剤をそれぞれ1錠の半分ずつ飲んだところ、意識を失いあおむけに倒れた。同被告も青の粒を4錠飲んだ後、苦しんでソファに倒れたが、Eさんが救急車を呼ぼうとすると「呼ばないで」と拒否したという。

 さらにEさんは同21日の帰国前に、押尾被告から「薬を持って帰ってほしい」と頼まれた。「危ない薬じゃないか。捕まっちゃう」と思い拒否すると、「周りの人たちが、たとえ(刑務所に)入ったとしても、すぐ出してくれるから大丈夫」と言われたという。

 この日の証言で押尾被告が、女性にMDMAを飲ませてセックスしていたこと、また救急車を拒否したり「密輸」を依頼するなど、薬物使用の隠ぺいを計ったことが発覚した。険しい表情以上に、押尾被告は厳しい立場に立たされた。

 [2010年9月7日7時58分

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