歌舞伎俳優市川海老蔵(32)が25日朝、東京・西麻布の飲食店で顔などを殴られて鼻の骨や左ほおの骨を折り、前歯が欠けるなど全身打撲のけがを負った。妻のフリーキャスター小林麻央(28)が110番通報。救急車で病院に搬送され入院した。警視庁目黒署は傷害事件として調べる方針。30日から京都・南座「吉例顔見世興行」に出演を予定していたが、休演が決まった。事件を受け、父の市川団十郎(64)は「人間修業が足りない」と怒り、麻央は団十郎とともに都内で開かれた後援会で頭を下げた。

 歌舞伎界のお騒がせ男は結婚しても“健在”だった。警視庁目黒署などによると、この日午前7時20分ごろ、東京・目黒区の海老蔵の自宅から妻の麻央が「夫がけがをして帰ってきた」と110番通報した。パトカーで警官が駆け付けると、酔った状態の海老蔵は前歯が欠け、顔や頭のけがで出血と左目にあざがあり、救急車で都内の病院に搬送された。自分で歩くことができ、会話もできる状態だったが、海老蔵の白いTシャツの背中に血の跡があったという。

 救急車には母希実子さんが付き添った。その後、父市川団十郎と警官に対応した麻央も病院に向かった。病院の診察で鼻の左横を陥没骨折、左ほおの骨にひびが入り、側頭部にこぶがあり、胸、左脇腹、左のあごに殴られたあとがあるなど全身打撲と判明。海老蔵はそのまま入院した。

 海老蔵はこの日午後に来年1月「初春花形歌舞伎」(東京・銀座のル・テアトル銀座)の会見を予定していたが、前日24日に体調不良を理由に中止することを発表した。体調不良の詳細は明かさなかったが、10月からの映画撮影で腰を痛めていたという。しかし、海老蔵は同日午後6時ごろに帰宅した後、再び外出し、同11時ごろから西麻布で歌舞伎関係の仲間と飲み始めた。25日午前0時半に移動した2軒目の店で初対面の4、5人のグループと知り合い、海老蔵1人がグループに加わった。数軒の店をはしごし、西麻布の飲食店で同4時すぎまで飲んでいたが、グループとトラブルとなり、その1人に顔などを殴られたという。その後、タクシーで帰宅した。海老蔵は目黒署の調べに「顔を何回か殴られた。飲んだ店は初めてでよく覚えてない」と説明。団十郎には「具合の悪い人を介抱したら、いきなり殴られ、一方的に暴行を受けた」と話した。目黒署は傷害事件として調べる方針。

 しかし、被害者の海老蔵も、体調不良と発表した日に飲みに行った事実は重い。歌舞伎の興行を手掛ける松竹関係者は「開いた口がふさがらない。体調不良を理由に会見の中止を発表した日に、平気で飲みに行く神経が分からない」。

 海老蔵は顔などにけがを負ったため、30日からの京都・南座「吉例顔見世興行」は休演する。昼の部「阿国歌舞伎夢華」では玉三郎と共演、夜の部「外郎売」では家の芸に挑む予定だったが、松竹は代役の選考に入った。今年7月に麻央と結婚披露宴を行い、海外公演が成功するなどハッピーな1年になるはずが、最後にどんでん返しが待っていた。海老蔵は今日25日にも退院する可能性がある。

 [2010年11月26日8時34分

 紙面から]ソーシャルブックマーク