東京都港区の飲食店で歌舞伎俳優市川海老蔵(32)が殴られ大けがを負った事件で、警視庁は29日、傷害容疑で東京都杉並区在住の男(26)の逮捕状を取った。海老蔵は警視庁の事情聴取に「知人の元暴走族リーダーの仲間から暴行を受けた。外国人風の色の黒い男に殴られた」と説明していた。警視庁は男の身柄を確保した上で、容疑が固まり次第、逮捕する方針。また、海老蔵はこの日午後5時から顔面整復手術を受け無事成功したが、全治6週間の見込みで術後10日間の入院が必要だという。

 捜査関係者によると、海老蔵は25日未明から東京・西麻布の飲食店で、知人の暴走族出身で不良グループのリーダーやその仲間数人と酒を飲んでいた。何軒か店をはしごした後、飲食店が入る雑居ビルの11階の店で、トラブルが起きたという。

 海老蔵は警視庁の事情聴取にそのリーダーが酔いつぶれ「(そのリーダーの)仲間の1人に殴る、蹴るの暴行を受けた」と話しているという。リーダーの名前については「言いたくない」と明かさず、「顔をかばうのに必死だった」と話しているという。

 関係者によると、海老蔵はかなり泥酔しており、その酔いつぶれたリーダーを介抱したつもりだったが、周囲にはかなり乱暴に扱っているように見えたという。そのため、リーダーの後輩にあたる、26歳の警視庁が逮捕状を取った男が海老蔵に対して激怒。店の外階段に連れ出し、暴行に及んだとみられる。

 海老蔵は防戦一方で、殴られっ放しだったようだ。警視庁が事件現場とされるビルの外階段を実況見分したところ、11階から下の外階段に複数の血痕が見つかり、DNA鑑定を進めていた。さらに、警視庁は事件現場となった西麻布の雑居ビル11階の店も現場検証する方針。

 一方、海老蔵はこの日午後5時から入院先の都内の病院で、殴られた顔面を整復するための手術を受けた。「上顎洞根本術」と呼ばれるもので、陥没骨折している頬骨などを治療したという。経過は順調だが、術後10日間の入院が必要という。

 海老蔵は全治6週間の見込みで、座頭公演を予定する来年1月「初春花形歌舞伎」に影響する可能性が出てきた。興行を主催する松竹は現時点では「公演は行う予定」としているが、術後の経過によっては主治医の判断で何らかの制限が加えられることも考えられる。海老蔵は6演目中5演目に出演予定で、「高時」にらみのない「口上」「蛇柳」「七つ面」は問題はなさそうだが、飛び六方など激しい動きのある「勧進帳」は難しいかもしれない。最悪の場合、演目変更の可能性もありそうだ。

 [2010年11月30日10時49分

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