漫画「タイガーマスク」の主人公・伊達直人を名乗る人が、児童養護施設などに匿名寄付を行う運動が各地で起きる中、原作者の故梶原一騎さんの実弟で作家真樹日佐夫氏(70)が10日、同作品の実写版映画(11月公開予定)を製作することを明らかにした。「伊達直人の精神」がさらに広がり、日本が良くなればという願いがあるという。真樹氏はこの日、長年寄付を続けてきた福岡市のホストを「初代伊達直人」に任命。寄付のほか、災害被害を援助するための「伊達直人基金」設立も発表した。

 真樹氏によると「タイガーマスク」の実写版映画は5月にクランクイン、11月公開の予定だ。現在、有名俳優などから主人公「伊達直人」役候補らを選定中で、正式タイトルや脚本も検討作業を続けている。

 「タイガーマスク」では児童養護施設で育った伊達直人が、タイガーマスクというレスラーであることを隠しつつ、施設に寄付をしていた姿が描かれた。映画版のテーマについて真樹氏は「寄付をさとられたくない、という伊達直人の『匿名の愛』『秘めたる情熱』。こうした伊達直人の精神がバックボーンになった作品になる」と説明した。

 真樹氏は「タイガーマスク」原作者の故梶原一騎氏の実弟。作家、映画プロデューサーで、世界空手道連盟「真樹道場」宗師を務める空手家でもある。映画化の背景には「タイガーマスク運動」が起きていることをきっかけに、「伊達直人の精神」がさらに広まり「他人の不幸せをかえりみない人だらけになった世の中が、タイガーマスクで変わっていければ」という願いがある。

 そのため真樹氏はこの日都内で、福岡・中洲の現役ホストでホストクラブオーナーも務めるKAIZA(カイザ)さん(年齢非公表)と面会した。KAIZAさんは約7年前から福岡の児童施設などにオムツや現金などを寄付する活動を独自に続けており、このほど真樹氏にも「タイガーマスクがさらに脚光を浴びる一助になれば」と100万円の寄付を申し出てきたことがきっかけ。

 真樹氏は今後も活動を続けてほしいという願いを込め、KAIZAさんを「初代伊達直人」に任命した。KAIZAさんは「ありがたい話です。より一層頑張りたい」と喜んだ。

 また真樹氏は、この100万円を基に「伊達直人基金」の設立も発表。近く口座も開き、児童施設への寄付のほか、各地で起きている災害被害への援助などを、集まった寄付金を基に展開していくという。今後は各地で「伊達直人2号」「3号」と任命していき、映画化とともに「タイガーマスク運動」が一時の現象に終わらないよう「日本が良くなるため」活動していきたいという。【広部玄】

 ◆タイガーマスク運動

 昨年12月25日、前橋市の児童相談所玄関に、「伊達直人」の署名や「子どもたちのために使ってください」のメッセージとともに、ランドセル10個が置かれた。その後、各地で「伊達直人」を名乗る匿名の人が、児童施設にランドセルや文房具、現金などを善意で寄付する現象が起きた。先月中旬には全国47都道府県まで広がり、「タイガーマスク」以外の漫画主人公を名乗る贈り主も次々現れた。「タイガーマスク」は1968年から71年まで「週刊少年マガジン」などに掲載されていたプロレス漫画。アニメは日本テレビ系で69年から71年まで放送された。

 [2011年2月11日8時20分

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