昨年7月に亡くなった劇作家つかこうへい氏(享年62)の長女で宝塚歌劇団の娘役トップスターだった愛原実花(25)が女優として再デビューする。8月の名古屋・御園座で片岡愛之助と共演し、来年1月には市村正親主演のミュージカルに出演する。「舞台にこだわらず、新しいことに挑戦していきたい」。ドラマ、映画出演にも意欲を見せている。

 今月10日、父つかこうへい氏の一周忌を家族だけで行った。宝塚歌劇団を退団して約1年経過した愛原も女優として新たなスタートを切る。「宝塚ではがむしゃらに走ってきたので、今までを振り返ったり、自分を見つめ直したり、いい時間だった。舞台がやっぱり好きだし、今の自分でしかできない役をやりたい」。

 第1弾が8月の片岡愛之助主演「好色一代男」で、島原のおいらん夕霧太夫とやくざの囲われ者のおしのの2役。「和ものは宝塚であまりやったことがなくて、初めてのことばかり。日本舞踊のけいこをしています。初めてお会いした愛之助さんに『一緒に頑張りましょう』と言っていただき、気が楽になりました」。

 来年1月はミュージカル「ラ・カージュ・オ・フォール」(東京・日生劇場)に出演する。市村ふんするゲイクラブの看板スター、ザザの息子の婚約者アンヌ役。先日のスチール撮影では戸惑ったという。「相手役が男性なのは初めてで、カメラマンに『寄り添って』と言われても、手をどこに置いていいか分からなくて、ガチガチでした。宝塚だったら、平気だったんですけど」と苦笑いした。

 宝塚は04年から退団するまで7年間在団した。「小さい時から好きで、1人で当日券を買い、夢中になって見ていました。宝塚は夢を売り、みんなひたむきに舞台に立っていた。私にとって特別な宝物という感じです」。娘役トップスターとしての退団公演中に父が亡くなった。

 「宝塚を受験する時も、やめる時も自分で決めました。父は、女の子だから、普通に結婚して女の子として幸せになってほしいという思いが強かった」。それでも、愛原の出演舞台は欠かさず見ていた。「父は舞台のことはあまり言わなかったけれど、退団を決めた時に『前向きに頑張って』と言ってくれました」。つか氏は「娘に日本と韓国の間、対馬海峡あたりで散骨してもらおうと思っています」と遺言していたが、まだ実現していないという。【林尚之】