地上波テレビが24日、東日本大震災の被害が大きかった東北3県を除く44都道府県でデジタル放送に完全移行した。総務省によると、地デジ化の相談を受け付けている総務省のコールセンターへの電話件数は24日午後6時現在で約9万8000件に上り、7月の1日平均件数(約2万4000件)を大きく上回った。さらに、NHKと民放各局にも約4万7000件の問い合わせが寄せられ、合わせると14万5000件に達した。放送関係者からは、地デジ準備が間に合わない「地デジ難民」が10万世帯残っているとの見方も上がっている。

 1953年に始まったアナログ放送は24日正午で終了し、60年近い歴史に終止符を打った。テレビは大きな変革の時を迎えたが、それを象徴するかのように、総務省地デジコールセンターや、NHKのアナログ放送終了お問い合わせセンターには正午以後に電話が殺到した。

 地デジコールセンターには午前中、約3万9000件あった問い合わせ電話が、正午から午後6時までに5万9000件増え、計9万8000件となった。NHKも正午までは1803件だったが、正午から午後8時までの8時間に2万9200件あり、計約3万1000件となった。一時は電話の応対ができない状態になったという。民放連も、東北3県を除く44都道府県のテレビ局115社に、午前中326件(うち苦情64件)だったが、正午から午後1時までの1時間で4476件(うち苦情477件)を記録。その後、午後1時から同7時までの6時間は1万1191件(苦情648件)あり、計約1万6000件に上った。

 総務省幹部は「大きな混乱はなかった」とし、NHKも正午からの混乱は「その後落ち着いている」と説明した。NHKの松本正之会長と民放連の広瀬道貞会長はこの日、都内で共同会見を行い、視聴者の反響に、それぞれ「終了のお知らせをやってきた効果が上がっていると思う」、「最終的に大きな混乱なく切り替えを迎えた」と評価した。

 一方で、受信機やアンテナの対応が遅れてテレビが見られなくなった「地デジ難民」も一部出た。寄せられた電話には「地デジ移行を知らなかった」「チューナーが売り切れて手に入らない」との苦情も目立った。実数は把握できていないが、放送関係者の間では、高齢者を中心に10万世帯程度が未対応との見方が強まっている。21日の民放連定例会長会見で、広瀬会長も未対応世帯は約10万世帯との見込みを示していた。地デジ難民が出たことに広瀬会長は「この1週間が勝負だ」。NHK松本会長も「移行がまだの方には、丁寧に説明して数を少なくしていきたい」と語った。

 岩手、宮城、福島の3県は移行時期を来年3月末まで延期した。

 地デジ化は、98年に政府が計画を発表、01年の改正電波法成立により11年までのアナログ放送終了が決定。地デジ放送は03年に東京、名古屋、大阪の3大都市圏で始まり、06年には全都道府県に広がった。