【米ニューヨーク26日(日本時間27日)=瀬津真也】歌手小柳ゆきが、30歳の誕生日に“世界の音楽の殿堂”カーネギーホールの舞台に立った。国際交流イベント「KAJIKI’S

 ARTIST

 SHOW」(IFA国際フラワーアレンジメント協会主催)の特別コンサートに出演した。抜群の歌唱力で在米邦人の観客の涙を誘う場面もあった。

 目をつむり心を整えた小柳は、マイクを口から離してアカペラで歌い始めた。日本人の心の原風景をつづった童謡「ふるさと」。カーネギーホールの壁に、優しくも力強い歌声が反響する。在米邦人で埋まる客席から、すすり泣きが漏れた。コンサートは、東日本大震災後から歌ってきたこの曲で幕を閉じた。異国の地で迎えた30歳の誕生日。その歌声が万雷の拍手でたたえられた。

 三顧の礼で招かれた。イベントを開催したIFA梶木敏巳理事長から「日本に素晴らしい歌唱力の歌手がいると、音楽の殿堂で伝えたかった。我々とご一緒していただきたいと、2年越しでお願いしていました」と紹介された。理事長には12年前のデビューライブを目撃して以来の悲願だったという。小柳も「日本のアート文化を世界に広めていく活動に参加させていただけて幸せ」と照れた。

 11年前、米人気グループBOYZ

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 MENとのレコーディング以来2度目のニューヨーク。「クラシック音楽ではなくポップスでは、なかなか立たせてもらえないカーネギーの舞台だなんて、夢のような誕生日プレゼント」。ミリオンヒットも飛ばしたデビュー当時と違い、最近3年間は新曲発表から遠ざかっているが、精力的にライブ活動を積み重ねてきた。この日も黒人歌手に負けない迫力の歌声で、米歌手ホイットニー・ヒューストン(48)のヒット曲「I

 Have

 Nothing」を英語で歌唱。確かな実力でつかみ取った、音楽界最高峰の舞台だった。

 小柳は「CDもいいけれど、私は緊張感を共有できるライブの魅力を、もっと多くの人に知ってもらいたい。30代はより繊細になるだろうけど、一方で大胆にもなりたい」。貴重な経験をした小柳の歌声は、30代の扉を開いて、さらに深みを増していくはずだ。

 ◆カーネギーホール

 1891年5月5日、鉄鋼王カーネギーが設立。ニューヨークのセントラルパークの少し南にある。こけら落としは作曲家チャイコフスキー指揮による公演で、64年2月にはビートルズが初のロック公演を行った。日本人では88年10月の加藤登紀子をはじめ、93年7月に高橋真梨子、96年7月に森山良子が公演。95年9月には美空ひばりさんがVTRでトランペッター日野皓正と共演して話題になった。