09年8月に合成麻薬MDMAを一緒に飲んだ女性を救命しなかったとして、保護責任者遺棄罪などで懲役2年6月の判決を受けた俳優押尾学被告(33)について、最高裁は15日までに上告棄却の決定を下した。同被告は不満を訴えているが、近く実刑が確定し、収監される。09年11月に確定した麻薬取締法違反(使用)の執行猶予も取り消される方向で、未決勾留期間180日を引いても約3年半服役する見通しだ。

 09年12月7日に麻薬取締法違反(譲渡)で再逮捕されてから800日。1審の裁判員裁判、控訴審、最高裁まで粘り続けた執念も実らず、押尾被告は収監される。最高裁第1小法廷(宮川光治裁判長)は上告棄却の決定を下し、同被告と主任弁護人の松本修弁護士の元には14日に上告棄却の書面が届いた。

 押尾被告は弁護人の野島慎一郎弁護士を通じて、「非常に残念で納得できない」とコメントした。また、同弁護士も「弁護人としては残念な結果になった。今後の対応については本人と弁護団と協議して決める」とした。最高裁判決日から10日以内に判決訂正申し立てが出来るが、申し立てが認められたケースはほとんどなく実刑が確定する見通しだ。

 押尾被告は09年8月2日に東京・六本木のマンションで田中香織さん(享年30)とMDMAを服用して2度の性交後、田中さんの容体が急変したにもかかわらず救急車を呼ばず、救命しなかったとして保護責任者遺棄致死罪に問われた。裁判員裁判では、同被告が(1)田中さんに必要な保護をすべき保護責任者であるか(2)押尾被告の通報の遅れと田中さんの死との因果関係などが問われた。

 押尾被告側は(1)薬物を持参したのは田中さん(2)譲り受けたMDMAは錠剤でなく粉末(3)田中さんの死亡推定時刻は、錯乱状態が10分続き突然心肺が停止した午後6時。同47分~53分とする検察の主張は誤り、などと主張したが認められなかった。唯一、弁護団が専門医から引き出した(4)MDMAには解毒剤がなく、心停止前に救急搬送しても救命可能性は3~4割という証言のみ認められ、保護責任者遺棄罪にとどまった。

 昨年4月の東京高裁判決では、「通報によって自らの麻薬使用が発覚することを恐れ、芸能人としての地位を失いたくないという理由で放置した」と痛烈に批判された。実刑の確定および収監で、押尾被告の芸能界復帰は、さらに厳しいものとなった。

 ◆押尾学(おしお・まなぶ)本名同じ。1978年(昭53)5月6日、東京都生まれ。98年にフジテレビ系ドラマ「愛、ときどき嘘」でデビュー。02年には歌手デビュー。趣味は格闘技、オートバイ。特技は英会話。184センチ、血液型A。