6月に4代目市川猿之助を襲名する市川亀治郎(36)、9代目市川中車襲名で歌舞伎界入りする香川照之(46)、5代目市川団子として初舞台を踏む香川政明君(8)らが11日、東京・浅草で「お練り」を行い、沿道に1万8000人が詰め掛けた。香川は長男政明君に襲名の重圧に苦しむ様子を暴露され、たじたじとなった。香川の父で2代目市川猿翁を襲名する市川猿之助(72)や亀治郎の父市川段四郎(65)も加わり、沢瀉屋(おもだかや)ファミリーが勢ぞろいした。

 沿道を歩く一行に、「沢瀉屋!」「4代目!」などの掛け声があちこちから飛んだ。午前10時40分ごろ、猿之助、亀治郎、香川らは雷門前を出発した。最近は、車いす姿が多かった猿之助も、この日はしっかりとした足取りで歩いた。療養中だった段四郎も、病み上がりとは思えない様子で同行した。浅草は、初代と2代目猿之助が生まれた一門ゆかりの地。一行は浅草寺本堂まで、鳴り物や木遣(きや)りなどに先導されながら練り歩いた。

 亀治郎は、本堂前に集まった人たちを前に「一門が一丸となり、公演を成功させたい」とあいさつした。歌舞伎初挑戦となる香川も「少しでも精進し、名跡を継がせていただく責任を果たしたい」と話すと、大きな拍手が起こった。

 香川は、昨年9月の襲名会見で、母浜木綿子と父猿之助の離婚のため、45年間交流がなかった猿之助と同居していると明かした。ところがこの日は既に別居していると説明した。ただ歌舞伎の稽古で指導は受けており、「父は近くに住み、いろいろなアドバイスをもらっています」と良好な関係であることを強調した。

 沢瀉屋ファミリーの勢ぞろいは、昨年9月の襲名会見以来。この日は、香川の長男、政明君が大活躍だった。香川が「歌舞伎は、数段、数十段、厳しい世界。すべての日々が闘い。プレッシャーでカチカチで夜も寝られない」と心境を吐露すると、すかさず「眠れないから、睡眠薬を飲んでいるんだよ」と暴露した。これには香川も「今は飲んでいない。少し黙ってなさい」と苦笑いしながら、たしなめた。ところが、政明君は「お父さんは、疲れを忘れるために、いつもお酒を飲んでる」とまたまた暴露。息子の大物ぶりに香川もお手上げの様子だった。【林尚之】

 ◆襲名公演

 6月と7月の2カ月連続で東京・新橋演舞場で上演。6月は昼の部が市川中車の新歌舞伎「小栗栖の長兵衛」と「口上」、新猿之助の「四の切」。夜の部はスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」で新猿之助がヤマトタケル、中車が帝(みかど)を演じる。7月は昼の部が6月と同じ出演者で「ヤマトタケル」、夜の部が市川団十郎、海老蔵、中車の「将軍江戸を去る」と「口上」、新猿之助の「黒塚」、新猿翁の「楼門五三桐」。