「3年目の浮気」のヒットで知られる歌手黒沢博(63)が、苦節29年を乗り越えて再ブレークしている。トリンドル玲奈とのデュエットで登場しているソフトバンクのCMが話題になり、「3年目-」の歌詞を替えたCM曲「タダのうた~3年タダの学割~」のDL再生回数は547万件を突破した。白戸家の父親犬が「それより誰だあのオヤジは」とつぶやく第2弾CMも好評だ。

 2月、黒沢の元に突然のCM出演オファーがあった。「即答して欲しい」。ソフトバンクの人気CMに出演できるなんて願ってもない話。4日後には撮影現場にいた。当初はネット配信CM限定での出演予定だったが、仮編集を見たソフトバンク孫正義社長の「テレビでもやりなさい」の一声でテレビ放送が決定。3月末に放送開始されるとすぐに評判になった。途端にテレビ出演6本、営業も10本以上が決定。黒沢は「なぜ今、僕なんですかね~」と首をかしげつつ、「30年間、チャンス来い、来いと唱え続けてきました。信じた者は救われた」と笑いが止まらない。

 ヒロシ&キーボーのデュオで、1982年(昭57)にリリースした「3年目-」は、130万枚を売り上げた。だが、続く「5年目の破局」「7年目の洒落」はヒットせず、2年で解散。当時を振り返り、黒沢は「あのシリーズに乗ったことが失敗の原因。ピンク・レディーじゃないんだから。当時は休みゼロで働いて、月給は手取り25万~26万でしたよ」と苦笑いする。

 解散後の2年間は、全く仕事がなかったという。それでも、落ち込まずに「仕事が来ないなら、自分で主催して人を集めよう」と決意。ホテルの交渉から、音響、照明、バンド手配、チケット発注などを1人でこなしてステージに立った。当日の受け付けだけは23歳下の妻の担当。「アルバイトで食いつないだ時期もある。正直、借金したときもありますよ」という。

 そんな地道な活動を1人で四半世紀も続けながら、底抜けに明るい黒沢だが、「ブームは必ず去る怖さも知ってますから」と、再ブレークの今を冷静に受け止めてもいる。【山田準】

 ◆黒沢博(くろさわ・ひろし)1948年(昭23)10月18日、神奈川県生まれ。俳優の黒沢年雄は兄。66年に寺内タケシとバニーズのボーカルでデビュー。82年、ヒロシ&キーボーで「3年目の浮気」が大ヒット。日本有線大賞「最優秀新人賞」受賞。趣味は料理、ゴルフ、古美術。夫人は23歳下で恐妻家。176センチ、67キロ。血液型AB。