ロンドン五輪の開会式は英国が生んだエンターテインメント満載の内容となった。開会式は27日夜(日本時間28日午前)にロンドン東部の五輪スタジアムで行われた。スパイ映画「007」の主人公とエリザベス女王の共演や、コメディー映画「Mr.ビーン」の主人公の登場で観客を楽しませ、元ビートルズ、ポール・マッカートニー(70)の熱唱で締めくくった。

 音楽、映画、演劇、文学など、英国文化が余すところなく盛り込まれ、伝統とエンターテインメントを融合させた開会式となった。

 演出は映画「スラムドッグ$ミリオネア」などで知られるダニー・ボイル監督(55)、音楽監督はテクノユニットのアンダーワールドが務めた。英国が誇る文豪ウィリアム・シェークスピアの古典「テンペスト」から着想を得て、「緑と農民」を題材にしたミュージカル風のショーで国の成り立ち、産業革命などの歴史を紹介。シェークスピア俳優として有名なケネス・ブラナー(51)が熱演した。

 続いて、英国が生んだスパイ映画の傑作「007」シリーズのジェームズ・ボンドの登場だ。新シリーズでボンド役のダニエル・クレイグ(44)がバッキンガム宮殿からエリザベス女王(86)をエスコートする映像が流れると、上空にはヘリコプターが。スタントが扮(ふん)した女王がヘリから飛び降りると、ステージに実際のエリザベス女王が登場した。手の込んだ映像と大がかりな仕掛けは、五輪開会式でしかできないものだ。

 英国が誇る人気キャラクターが次々登場した。映画「炎のランナー」のテーマ曲をロンドン交響楽団が演奏中、いつの間にかコメディーの人気キャラクター「Mr.ビーン」を演じるローワン・アトキンソン(57)が交じっていた。観客は大笑いだった。

 ファンタジー文学「ハリー・ポッター」シリーズの作者J・K・ローリングさん(46)が「ピーターパン」の一節を朗読すると「不思議な国のアリス」など英国で生まれたおとぎ話の登場人物が次々現れた。

 最大の見せ場は、マッカートニーの熱唱だ。名曲「ヘイ・ジュード」を観客約8万人と合唱した。歌詞には、普遍的で深い意味もあった。「すべてを1人で背負い込むことはない」「君に必要なことは君にしかできない」。選手や五輪に参加するすべての人々へのエールの気持ちが込められていたようだ。

 各ジャンルの新旧を織り交ぜながら、多くの娯楽文化を生み育て、世界をリードしてきた英国が、強烈な自負を見せたものだった。

 ◆「ヘイ・ジュード」

 ビートルズが68年8月に発表した18枚目シングル。ポール・マッカートニーがジョン・レノンと妻シンシアの離婚を受け、息子ジュリアンを励ますために書いたと言われる。曲後半は長いリフレインが続き、演奏時間は約7分。全世界1300万枚の売り上げは、世界歴代第4位とされる。