歌舞伎俳優の市川染五郎(39)が松本錦升(きんしょう)の名で家元を務める日本舞踊松本流の「第十回松鸚会」宗家松本幸四郎古希記念舞踊公演(27・28日、東京・国立大劇場)で、染五郎の長女(5)が「松田美瑠(みる)」の芸名でデビューする。染五郎は「将来は音楽の道に進めたい。その第1歩」と話している。長女は公演で歌を披露する予定。

 松本流の舞踊会は、09年以来3年ぶりとなる。27日の舞踊劇「傾奇(かぶき)おどり・あーちゃん」は、幼少期に「あーちゃん」と呼ばれていた染五郎の半生を踊りにしたもの。姉の松本紀保(40)がナレーションを担当し、染五郎の長女はポップスを1曲歌うことになった。

 長女は、これがデビューとなるが、長男は、既に松本金太郎(7)として歌舞伎の舞台を踏んでいる。染五郎は「男の子は歌舞伎があるけれど、女の子にはない。1つの現場を作ってあげたかった」と親心をみせる。姉の紀保、妹松たか子(35)は女優になったが、長女には「できれば音楽にかかわる道に行ってほしい」という。赤ちゃんのころから松の歌をよく聞かせ、その後は、染五郎が好きだった「視覚的に楽しい」松田聖子(50)のDVDなどを見せたりもした。「幼稚園では、ほかの子と話が合わないみたい」と苦笑いする。芸名の「松田」も松田聖子に由来するという。

 染五郎は「傾奇(かぶき)おどり・あーちゃん」について「リズムに合わせて踊ることが、踊りの原点と思っている。体を動かし続けるというコンセプトでトライアスロンを見るような感覚になると思う。予期せぬ化学反応もあるかも知れない」と話す。共演の尾上流家元の尾上菊之丞も「プロット(あらすじ)を拝見したら、染五郎さんそのものなので、楽しみです」。

 28日の第1部は幸四郎、錦升、幸紀(紀保)、幸華(松)4人の「松寿三番叟(さんばそう)」で幕を開け、第2部で金太郎も父染五郎とともに「五條橋」を踊る。染五郎は「にぎやかに盛大なものにしたい。日本舞踊を身近に感じていただけるきっかけになれば」と意気込んでいる。【林尚之】