【苗栗(台湾)26日=山田準】サックス奏者の矢野沙織(26)が台湾で熱烈歓迎された。台湾最大級の国際音楽祭「苗栗国際芸術季」にゲスト出演。最新アルバム収録曲「Answer」など5曲を演奏した。今日27日は台北でバースデーライブを行う。

 矢野の演奏に、観客約1万人がくぎ付けになった。突き抜けるサックスの音色が、花火が舞う夜空に響き、演奏が終わるたびに、温かい拍手に包まれた。尖閣諸島問題の影響などは全く感じさせない歓迎ムード。感激した矢野は感謝の思いを込めて中国語で「こんなにたくさん来てくれてうれしいです。でも、緊張しています」とあいさつした。

 矢野にとって、台湾は米国に続き海外進出を果たした地域だ。9枚のアルバムはすべて台湾ジャズチャートでトップ10入り。07年に中国人気女優チャン・ツィイーらとアジアンビューティーの花王CMに出演。直後にリリースしたベストアルバム「ジャズ回帰」は同チャートで3週連続1位を記録した。この日は、台湾の人気ロックバンド、五月天(メイデイ)も出演。矢野はサックス1本で魅了した。

 中学時代は不登校で落ちこぼれ。「先生、学校、親が嫌い」だったが、ジャズと出会い道が開けた。中学3年で、自ら100軒以上のジャズクラブに売り込み、デビューにこぎつけた。高校には進学せず、この世界に懸けた。女性の地位が低かったジャズ界に風穴を開けた。

 そのパワーは、台湾にも伝わった。公演関係者によると、知名度の高い矢野の影響で、少なかった女性ジャズ人口が増えたという。この現象を受け、矢野は「私がキャンディ・ダルファーにあこがれたみたいに刺激になってくれればうれしいです」と話している。

 ◆矢野沙織(やの・さおり)1986年(昭61)10月27日、東京生まれ。16歳の03年9月にジャズの名門SAVOYからデビュー。04年「OPEN

 MIND」がテレビ朝日系「報道ステーション」テーマ曲に。05年にNYで単独ライブ。07年のベストアルバム「ジャズ回帰」で日本ゴールドディスク大賞のジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー受賞。