<連載「気になリスト」(27)>

 西田征史が脚本を書けば当たる。業界で、そんな声があちこちから聞こえてくる。10年の日本テレビ系ドラマ「怪物くん」は翌11年に映画化され、興行収入30億円を突破。同年にMBSなどで放送されたオリジナルアニメ「TIGER&BUNNY」はアニメファンの枠を超えた人気を獲得して、今年9月に劇場版が公開された。来年秋に第2弾も公開される。日本テレビ系ドラマ「妖怪人間ベム」の劇場版は15日に公開されたばかりだ。

 既に原作がある「怪物くん」「妖怪人間ベム」のような作品のドラマ化も、基本設定を生かしながら最初から構築した独自性あふれる物語が支持された。描くキャラクターは、人間味あふれている。表面上は強くても心に痛みを抱えていたり、痛みを感じ取り、優しく寄り添う仲間がいたり。「ベム」でも妖怪人間が人間と交流しながら、人間になること、人間を守ることの間で揺れ動く心情を描いた。西田氏は「人間に期待している。人間を信じていたい」。人間を見つめ直した上で出た結論を脚本に反映させている。

 お笑いと演技に興味があり、学習院高3年の3学期にホリプロのお笑いオーディションを受け合格。最初の仕事は、武田真治のプロモーションビデオ出演だった。NHKの教育番組などにも出演したが、24歳になったころ、今後について考えた。短い時間ではなく、1時間くらいで人を笑わせたいと思った。芸人を辞めて脚本家の道を選んだ。

 その後は舞台の脚本や映画のプロット(構成)を書き続けたが約6年、まったく売れなかった。売れっ子芸人や消えていく芸人を横目で見てきた経験から「売れてるヤツは努力する。このままではいかん」と遊びを封印して脚本を書き続けた。08年映画「ガチ☆ボーイ」で注目され、人気脚本家の仲間入りを果たした。今も個性際立つキャラクターを生み出し続けているが、「芸人時代の経験だけでやってきていると思います」という。

 人と人の関係を描く作品が好きだ。「寂しがり屋なので『1人』を書くとつらくなっちゃう。今1つ、新しい企画があります。名前を見かけた時は、アイツだと思ってくれたらうれしい」と笑った。【村上幸将】

 ◆西田征史(にしだ・まさふみ)1975年(昭50)5月22日、東京都生まれ。学習院大法学部法律学科在学中もお笑い芸人と俳優として活動。つぶやきシローとアリtoキリギリスが同期。99年に芸人を辞めて脚本家に専念。03年TBS「深夜の星」を皮切りに、07年NHK教育(現Eテレ)「シャキーン」などを構成。TBS系「魔王」、NHK「ママさんバレーでつかまえて」などのドラマや「ガチ☆ボーイ」「おにいちゃんのハナビ」などの映画の脚本を担当。(12月18日付

 紙面から)