<連載「気になリスト」(70)>

 07年にロサンゼルスに移住し、ハリウッドでもまれ続けた。北村龍平監督(43)。新作「NO

 ONE

 LIVES(ノー・ワン・リブズ)」が4月27日に公開される。狂った愛を貫く男ドライバーが、愛する女を拉致した強盗団を追いかけ、惨殺を繰り返すバイオレンス。全編英語、迫力あるアクションと残酷で過激な暴力シーンで構成した。「ハリウッド映画を見て育ってきた。勝っても負けても挑戦したかった。『洋画だね』と言われる映画を作りたかったんです」。

 2年半前に脚本と出合い主人公にほれ込んだ。「ドライバーは、ほれた女をさらい自分を愛するように洗脳する。これほど複雑怪奇で謎めいたキャラはいない」。ドライバー役は「ホビット

 スマウグの荒らし場」(ピーター・ジャクソン監督、12月13日公開)などが控える英俳優ルーク・エバンス(33)。その他の出演者、スタッフもトップクラスの人材を集めた。今は全米監督協会(DGA)会員に名を連ねるが、人脈を築くだけで6年かかった。

 大阪・箕面自由学園高2年の時、授業中に「映画監督になるから」と宣言して中退した時から、ハリウッドを夢見ていた。03年「あずみ」、04年「ゴジラ

 FINAL

 WARS」など話題作を手掛けたが「安泰コースを捨てられるか?」と自問して渡米。ところがハリウッドのスタジオの重役には日本の実績など通用せず、英語を話せても関係なかった。

 優れた企画、脚本に巡り合えず、トップ俳優が絡む企画が来ても、動きだした途端、立ち消えになった。代理人を何度も代え、10件以上の企画を同時進行で動かし生活費を稼いだ。信頼できる仲間を見つけた今、逆襲の態勢が整った。「全部を捨てて4回戦ボーイとして闘った6年間は長かった。2、3年は怒濤(どとう)のように撮ります」。

 ようやく立てたスタートラインの味をかみしめるように笑った。【村上幸将】

 ◆北村龍平(きたむら・りゅうへい)1969年(昭44)5月30日、大阪府生まれ。17歳でオーストラリアに渡り、スクール・オブ・ビジュアル・アーツで映画を学び、卒業製作の「EXIT」で最優秀監督賞受賞。01年「VERSUS」で評価を高め、03年「荒神」などを製作。08年にハリウッド進出第1作「ミッドナイト・ミート・トレイン」を製作。(3月7日付

 紙面から)

 [2013年3月8日0時43分

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