フジテレビの新社長に内定している亀山千広常務(56)が20日、東京・台場の同局で次期社長会見を行った。視聴率3位と低迷する現状に、プロデューサーとして大ヒットさせたドラマ「踊る大捜査線」にかけて「踊っている場合ではなく、走らなければならない」と決意表明。フジ・メディア・ホールディングスの新社長に内定しているフジテレビ太田英昭副社長(66)も同席した。ともに6月27日の株主総会後に開かれる取締役会で正式決定する。

 亀山氏がフジテレビに新風を吹き込んだ。ブルーのスーツ、ネクタイのデザインは、水色とグレーのストライプ。さわやかだが、館内共聴システムで全社員が聞ける態勢で臨んだ会見での所信表明は泥くさく、熱かった。「『踊る新社長』などと書かれましたが、踊っている場合ではない。走らなければならない。血となり肉となり、社員全員で汗をかいていく」。

 同局は視聴率争いで長年トップの座を維持していたが昨年度、テレビ朝日と日本テレビに抜かれ3位に転落。隣に座るフジ・メディア・ホールディングス太田次期社長に「視聴率の早期回復が急務」との課題を受け、低迷理由を「テレビとは『人の今』を映していくもの。視聴率で後塵(こうじん)を拝しているということは『人の今』を捉えていない」と分析。その上で「日本テレビさん、テレビ朝日さん、TBSさん全部ひっくるめて、ライバルが他の放送局と言っているうちは勝てない」と断言した。

 社歴が1年後輩でドラマ「東京ラブストーリー」などをヒットさせた大多亮常務(54)とは「二人三脚でやっていきたい」と話し、視聴率3冠復帰への具体的な時期は「できるだけ早く。悠長なことは言っていられない」と語気を強めた。

 厳しい状況下での社長就任だが、「良い時に代わると維持しようとしてしまう。悪いときは人を育ててくれるから自分向きでいい」と胸を張った。一方で学生時代、役者、映画監督志望だったことも明かした。「周りにもっと優秀な人がいて…。本来だったら是枝監督のようにカンヌに行ってみたかった。師匠から『テレビに行け』と言われ、慌てて大学の就職課に行ったらフジテレビしかなくて」。

 会見終盤には、あえて言った。「僕より才能、知識がある人間がたくさんいる。社内に流れてるのであえて言います。どうか助けてくれ」。制作現場に精通するトップが初めて掛けた号令だった。【三須一紀】

 ◆亀山千広(かめやま・ちひろ)1956年(昭31)6月15日、静岡県生まれ。早大卒業後、80年フジテレビ入社。編成部に10年在籍後、制作部に異動。「ロングバケーション」など、多くの人気ドラマをプロデュース。03年に映画事業局長となり、「踊る大捜査線

 THE

 MOVIE」など手掛ける。06年に執行役員、10年に取締役、12年6月に常務取締役。編成制作局長時代、サッカーW杯日韓共催大会1次リーグ日本-ロシア戦(視聴率66・1%)放送権を引き当て、「神の手」ならぬ「亀の手」と呼ばれた。