大みそかの第64回NHK紅白歌合戦(午後7時15分開始)の出場歌手(全51組)が25日、東京・渋谷区の同局で発表された。初出場は9組で、白組は泉谷しげる(65)、クリス・ハート(29)、サカナクション、SexyZone、福田こうへい(37)、Linked

 Horizon。紅組はNMB48、E-girls、miwa(23)。昨年まで8回連続出場の倖田来未(31)はリストに入らなかった。

 初出場組による会見。幕が開くと、泉谷がど真ん中に陣取っていた。取材陣が意表を突かれたのを確認するや、身を乗り出して毒づいた。

 「ヘイ、どうも。何とも言えない違和感だな。『何で(俺が)いるんだろう?』という、その(微妙な)フラッシュたき方、やめろ!!

 コノヤロー。どうせ使いもしねぇくせに」

 65歳、歌手歴42年目にしての初出場。悪態は照れ隠しだ。NHK側は「これまでよく存じ上げていませんでしたが、被災地募金活動の先駆者でした」と選考理由を解説した。泉谷は1993年(平5)、北海道南西沖地震の際から被災地支援活動を行ってきた。「奥尻島を救え!」と、全国でゲリラ募金ライブを行い、94年長崎・普賢岳噴火、95年阪神・淡路大震災と続けて、11年の東日本大震災でも先頭に立った。だが、これらの活動を評価されての出場が、むずがゆかった。

 隣のmiwaの教科書通りのあいさつで、司会の有働由美子アナウンサーに「今のがあるべきあいさつの形で…」と突っ込まれると、「何でお前に注意されなきゃいけねぇんだ?

 おかしいだろ、それ!!」と言い返した。表情は終始笑顔。若い歌手たちに囲まれては落ち着かない。どこか気恥ずかしくもあった。

 ただ、歌手としての自負ものぞかせた。「紅白に興味なんてなかった。40年間見てない」と言いながらも、「今のNHKは民放にはないおかしさがある。歌番組『SONGS』のとき、『カラオケじゃないんだから歌詞をテロップで流すな、歌で映像で勝負しろ』と言ったら、やめてくれた。障害者用って事情もあるだろうけど、紅白も見せつけてくれと正直思う。おめえら、考えておけ!!」と、スタッフたちを指さした。

 被災地支援活動に活発だった90年代や2年前ではなく、微妙なこのタイミングというところに、ほかに目新しい大物歌手を呼べなかったNHKの苦しい台所事情が垣間見える。ただ、泉谷が危険さと期待を併せ持つ歌手であることは間違いない。“65歳の異端”泉谷が、今年のキーマンだ。【瀬津真也】