市川染五郎(41)が5月の東京・明治座「五月花形歌舞伎」(2~26日)夜の部で「伊達の十役」に初挑戦することが16日、分かった。「伊達の十役」は市川猿翁(3代目市川猿之助)が79年の明治座で164年ぶりに復活させた鶴屋南北作品。「伊達騒動」を背景に政岡、仁木弾正、累、細川勝元など善悪10役の早変わりと宙乗りを見せた。けれん味あるスピーディーな舞台は大入りとなり、猿之助歌舞伎を定着させた伝説の作品。猿翁は99年まで計9回演じ、市川海老蔵も10年と12年に上演している。

 「伊達の十役」に染五郎が満を持して挑む。「猿翁のおじさまにお会いした時に『伊達の十役は君がやったらいいよ』と言っていただき、私も『やることを目標にします』と話していた。それが実現すると聞いた時は驚きで頭の中が真っ白になり、うれしくて涙をたえることに懸命でした」。舞台中継を何度も見るなど憧れの作品だった。「猿翁のおじさまが一から作られた超娯楽歌舞伎の大傑作。歌舞伎を作る上での原点となる作品で、早変わりという趣向だけでなく、本も面白い。大好きな芝居を自分が出来る日がついに来ました」と喜びを隠さない。

 猿翁が「伊達の十役」を復活させた明治座での同作の上演は82年以来32年ぶりで、中村壱太郎、中村歌昇、中村隼人ら若手が共演する。早変わりは40回以上、セリフの数も300を超え、出ずっぱりの体力勝負の舞台となる。染五郎は「大変な舞台と聞いていますが、チームワークをしっかり持って、大汗をかいて走り回ります」と誓った。