脚本家三谷幸喜氏(53)がミステリーの女王アガサ・クリスティの名作「オリエント急行殺人事件」をフジテレビ開局55周年特別企画としてドラマ化することが18日、分かった。設定を昭和初期の日本に変え、狂言師野村萬斎(48)が名探偵役で主演する。来年新春に2夜放送される。

 三谷氏は、小学生時代に原作小説を読み、映画化された作品を中学生時代に見た。以来、憧れ続けた小説をドラマ化する。「『オリエント急行』が日本でテレビドラマになるとは!

 しかも脚本を僕が書くとは!

 こんなにすごいことがあるんだろうかと書き終えた今でも、まだ驚いています」と話している。

 原作では豪華列車「オリエント急行」の中で1人の乗客が殺され、乗り合わせた名探偵ポアロが捜査に乗り出すが、今回は舞台を昭和初期の日本の豪華寝台列車「特急東洋」に移す。第1夜は原作を忠実に脚色し、第2夜は犯人側の視点から描くオリジナル台本となり、三谷版「オリエント急行殺人事件」となる。同氏は「クリスティ財団の許可ももらっているので、バッタもんではありません」。

 三谷版の名探偵は勝呂武尊(すぐろ・たける)で民放ドラマ初主演の萬斎が演じる。三谷氏と11年舞台「ベッジ・パードン」で初コンビを組んでいる萬斎は「分厚い台本に度肝を抜かれましたが、今からわくわくしています」。三谷氏は「彼をおいて和製ポアロを演じられる人はいない。狂言で鍛えた身のこなしで、頭脳明晰(めいせき)、おしゃれできざな『ポアロ』を演じてくれるはず」。

 10年に三谷氏書き下ろしのフジテレビ開局50周年ドラマ「わが家の歴史」以来、同氏と6年越しで「オリエント急行殺人事件」ドラマ化に奔走した重岡由美子プロデューサーは「本の面白さ、主役の魅力に加え、心強いキャストが集結。テレビの底力をお見せできると思います」。

 三谷氏のミステリー挑戦はドラマ「古畑任三郎」以来15年ぶりになる。共演者は後日発表されるが、同氏は「これだけオールスターキャストの容疑者がそろったミステリードラマは、今までなかったんじゃないでしょうか」と自信をみせている。

 ◆「オリエント急行殺人事件」

 世界で10億部以上が出版され、ミステリーの女王と呼ばれる英作家アガサ・クリスティが、34年に発表した代表作。74年にシドニー・ルメット監督で映画化され、世界的に大ヒット。米国や英国でドラマ化もされている。日本では今回が初のドラマ化。現在ハリウッドでリドリー・スコット監督による映画化が進行中。