【トロント(カナダ)13日=細江純平】松本人志監督(50)が大歓声に感激した。初参加となったトロント映画祭で新作「R100」(10月5日公開)の特別上映後、観客1200人のスタンディングオベーションを浴びた。想像以上の盛り上がりに「このような体験ができると、また映画を撮りたくなる」と映画監督として強い刺激を受けた様子だった。

 上映が始まると、数分おきに観客から拍手や「ワ~オ!」などのため息まじりの歓声が響いた。上映終了後には総立ちの拍手が起き、松本監督は笑顔で手を振って応えた。「前半はゆっくりで、徐々に盛り上がっていくと思ったけど、始めから盛り上がりすぎて面食らった」。予想外の反応に驚きつつ、手応えを得た様子だった。

 フランスのカンヌやスイスのロカルノなど欧州の映画祭に参加してきたが、北米のトロント映画祭は初参加。上映前のレッドカーペットセレモニーでは現地日本人を含むファン300人以上から「松本コール」も起きた。サインを求めるファンも多く、10メートルを20分かけて歩いた。「こんなにいると思わなくてびっくりです」。

 独特の世界観を持つ作品を集めた「ミッドナイト・マッドネス部門」で上映された。松本監督作品は過去に、監督デビュー作の07年「大日本人」と09年「しんぼる」が同部門で上映され、いずれも約1200人の観客が集まった。今回の上映もチケットは即完売だった。

 海外からの注目も高かった。会見には10カ国20媒体の取材陣が出席。既に10カ国以上の配給が決まり、この日までにさらに18カ国からオファーが届いた。松本監督は「いろんな国から取材を受けさせてもらってありがたいです」。

 上映会では日本と違う映画鑑賞のスタイルに刺激を受けた。「米国の人はストレートで面白かったら声に出して笑ってくれる」。監督デビューから6年。4本の作品を発表してきたが、「このような体験ができると、また映画を撮りたくなる」。熱気冷めやらぬトロントで、早くも新作に向けた強い意欲を示した。