俳優水谷豊(62)が新たな右京を演じていることが4日、分かった。直木賞作家浅田次郎氏(62)原作の映画「王妃の館」(橋本一監督、来年ゴールデンウイーク公開)の主人公、天才作家の北白川右京だ。テレビ朝日系「相棒」で演じてきた警視庁特命係・杉下右京とはひと味違う右京で、パリを舞台に撮影。ストーリー性の強いコメディー作品になる。

 水谷が、出演を熱望していた浅田作品で出会った役も右京だった。00年に始まった「相棒」の大ファンの浅田氏が、「王妃の館」を連載したのは98~01年で、このたび、2人は都内で初対面した。

 水谷

 90年代からよく読んでいました。いつも「ひとつ上」を行く作品。やってみたかったんです。

 浅田氏

 右京は原稿を書いた時に、水谷さんが演じることを想定して書いていませんから、運命のようなものを感じました。

 メガホンを取ったのも「相棒」シリーズを手掛けた橋本監督だが、2人の右京はキャラが違う。杉下は並み外れた洞察、推理力と膨大な知識で事件を解決する。北白川は執筆中は周囲の声が耳に入らないほど集中し“小説の神様”が降りてくるのに備えてICレコーダーを持ち、浮かんだ文言を吹き込む。

 12年7月に「少年H」の撮影が終わった後に企画が持ち上がった。水谷は「違う方向に振り切ってコメディーにトライしたいと思いました。浅田さんは上質なコメディーもたくさんお書きになっている。その中で出てきた作品」と語った。関係者も「(水谷は)若い頃は軽妙な役を演じた。そういう面を60代で演じ新たな一面が出ればとコメディーを探した」と明かした。

 原作はパリ旅行にまつわる群像劇だが、小説家の右京が執筆する17世紀フランスを舞台とした小説に普遍的な人間愛が描かれていたため、映画は右京を主人公にした。水谷は「役名に『どうしたらいいんだろう』と悩みましたが、5秒後に『右京のままでいい』と決心しました。名前を変えるのは原作に失礼だし、別作品。小細工してはいけないと思いました」と語った。

 今年6月、パリで20日間のロケを敢行。浅田氏が執筆の際に泊まり、モデルにした「パビヨン・ド・ラレーヌ」とも交渉し、撮影に成功した。ロケを終え、水谷は「見てもらうまでは、何とも言えませんね。口に出すのも怖い…とにかくコメディーです」と笑みを浮かべた。

 ◆「王妃の館」

 売れっ子作家の北白川右京(水谷)は、取材旅行でパリにいた。300年の伝統を誇り“王妃の館”と呼ばれる「シャトー・ドゥ・ラレーヌ」のスイートルームに宿泊するツアーは1泊150万~200万円。ところが倒産寸前の旅行会社が、右京らが観光で部屋を空ける昼帯に、1泊29万8000円の格安ツアーで集めた別の客を右京らの部屋で過ごさせる“ダブルブッキング”をしていた。一癖も二癖もある客がそろい、計画は思わぬ方向へ…。