オダギリジョー(38)が、日本フランス合作映画「FOUJITA」(小栗康平監督、来年秋公開予定)に主演することが21日、分かった。1910年代後半からフランスで活躍した画家、藤田嗣治を題材にした作品。世界的にヒットした01年のフランス映画「アメリ」を手掛けたプロデューサーが本作を担当。オダギリの本格的な欧州進出をバックアップする。

 オダギリが演じる画家・藤田は、シャガール、モディリアニらとともに、1920年代に活躍したパリ在住の画家集団、エコール・ド・パリの代表的な画家の1人。フランスで最も有名な日本人の1人として知られている。

 今月15日にクランクインし、日本とフランスで撮影が行われる。セリフは日本語とフランス語の半々で、オダギリは6月からフランス語の特訓を受けている。「メチャメチャ難しいです。セリフをいかにしゃべるかだけに、時間をかけています」。セリフを丸暗記するスタイルだが、藤田がフランス語で話している映像も見るなどして、細かく研究。絵の特訓も受けている。

 自身と重ね合わさる部分もある。藤田は20代後半にフランスに渡ったが、オダギリは19歳で米国の大学に留学し、演劇学を専攻した。「海外で勝負しようという気持ちがすごく理解できるというか。僕が悩んだように、きっと藤田も悩んだだろうし。自分に置き換えられますよね」。監督と話し合い、伝記映画ではないと認識している。「藤田の歴史ではなく、藤田の心の中を描くことに重点を置こうと思っています」。

 日本とフランスで公開予定。韓国の鬼才、キム・ギドク監督の作品に主演するなど、海外作品に縁はあるが、欧州との合作映画は初めてだ。本作のプロデューサーは、世界的にヒットした01年「アメリ」を手掛けたクローディー・オサール氏。同氏は撮影開始時にスタッフに、「フジタを演じるオダギリにとても期待している」と話していたという。オダギリは「芸術性、作家性をすごく大事にする人。最高のプロデューサーと仕事ができていると思います」と信頼を寄せる。

 90年「死の棘」でカンヌ映画祭審査員特別大賞を受賞するなど、世界的に評価が高い小栗監督の10年ぶりの新作映画でもある。強力な製作陣から、世界中から注目が集まるのは必至。来年のカンヌ映画祭出品も視野に入れるとみられる。

 ◆藤田嗣治(ふじた・つぐはる)1886年(明19)11月27日、東京都生まれ。東京美術学校(現・東京芸大美術学部)西洋画科卒。1913年フランスに移住。ピカソらと親交を持つ。20年代に発表した裸婦像は「乳白色の肌」と呼ばれ、絶賛された。40年に帰国も、54年に再びフランスに戻る。フランス国籍を取得後はレオナール・フジタと名乗る。68年スイスでがんのため死去。享年81。