山崎貴監督(50)が「永遠の0」で作品賞と監督賞を受賞した。岡田准一(34)の主演男優賞を含む3冠となる。05年「ALWAYS

 三丁目の夕日」で石原裕次郎賞を含む3冠を獲得して以来9年ぶりの受賞。「エンターテインメント映画に光を当てる日本で数少ない賞」と感激した。

 「ノミネートだけで喜んじゃった。うれしくて小躍りした」。歓喜には理由がある。「日本の映画賞は微妙な感情を扱うアート系に目が動きがちで、エンターテインメント映画を評価しない。金を稼ぐぞと言うと格好悪い。でも映画が産業として振興していくため、大衆が喜ぶエンターテインメント映画が必要。光を当ててくれてうれしい」。

 有言実行の1年だった。「永遠の0」は興収約87億円。「STAND

 BY

 ME

 ドラえもん」も83億円。2作連続80億円超えはただ1人。日本映画界最大のヒットメーカーだ。

 迫力と美しさを兼ね備えたCGとVFX(特殊視覚効果)が印象的だ。「永遠の0」は臨場感あふれるゼロ戦の空中戦を再現。「ドラえもん」も、ひみつ道具を現実にあるかのような質感で描いた。しかしそれは物語を際立たせるための手段と強調する。「物語を語るため、スーパーな技術を作っている」。細やかな心情を巧みに織り込み、涙を誘う感動作を完成させた。

 「永遠の0」はゼロ戦操縦士の主人公宮部が生き抜くことに執着しながら最後に特攻を選ぶ心情を描いたが、理由は描かなかった。「それは受け手に委ねられている。岡田君が宮部として生きた姿から読み取ってほしい」。

 3冠獲得から9年。日刊スポーツ映画大賞について「文学に純文学の芥川賞と大衆文学の直木賞がある。映画の賞は芥川賞だらけ。エンターテインメントに光を与えることを貫いてほしい」。喜びをかみしめ、願いを込めた。【村上幸将】

 ◆山崎貴(やまざき・たかし)1964年(昭39)6月12日、長野県生まれ。00年「ジュブナイル」で監督デビュー。05年「ALWAYS

 三丁目の夕日」で日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞獲得。ほかに02年「リターナー」、09年「BALLAD

 名もなき恋のうた」、10年「SPACE

 BATTLESHIP

 ヤマト」など。

 ▼永遠の0

 祖母の葬儀に出た佐伯健太郎(三浦春馬)は、戦争で亡くなった血のつながった祖父宮部久蔵の存在を知る。祖父を調べるため、戦友に話を聞くが「海軍一の臆病者」との人物評ばかり。戦争中の宮部(岡田准一)は妻松乃(井上真央)と娘清子のために「必ず帰る」と誓い、生還のためゼロ戦の操縦技術を磨いた。しかし宮部は終戦間際、特攻を志願する。山崎貴監督。

 ▼「STAND

 BY

 ME

 ドラえもん」

 「ドラえもん」シリーズ初の3DCG作品。原作第1話でのび太のもとにドラえもんがやってくる「未来の国からはるばると」をはじめ、7つの人気ストーリーを組み合わせて映画化した。山崎貴監督。

 ▼作品賞・選考経過

 「永遠の0」には「CGが迫力あった」(渡辺武信氏)「こんなに迫力がある戦争映画が撮れるのか」(寺脇研氏)と称賛の声。「今の日本を考え、何かを一生懸命伝えたくて作ったと思う」(福島瑞穂氏)と「小さいおうち」を推す声も。決選投票は僅差で「永遠の0」が勝利。

 ▼監督賞・選考経過

 山崎監督が投票1回目で圧倒。「エンタメ大作を2本ヒットさせ、年間に大作3本作ることが出来る監督はいない」(木下博通氏)「『ドラえもん』もしかり、世界観を作るのにたけている」(林雄一郎氏)「単にCGを多用するのではなくストーリー性を感じた」(品田英雄氏)など称賛意見多数。