第57回ブルーリボン賞各賞が22日、東京映画記者会(日刊スポーツなど在京スポーツ7紙の映画担当記者で構成)から発表された。浅野忠信(41)が「私の男」で主演男優賞を初受賞。受賞を機に演技をさらに追求する“わがまま俳優”になると宣言した。授賞式は2月12日、東京・千代田区のイイノホールで行われる。

 受賞について浅野は「最近、日本で賞をいただいていなかった。もう誰にも相手にされていないんだなと思った。とってもうれしかった」と語った。これまで米アカデミー賞外国語映画賞候補になった主演映画「MONGOL」など海外作品にも多数出演。「私の男」では昨年、モスクワ映画祭で、日本人として31年ぶりの最優秀男優賞も受賞した。国内でも認められた喜びは大きかったようだ。

 30代に入って、撮影現場で感じていることがある。「俳優が役の心を見つける時間、余裕を監督が与えてくれない」。大先輩と接した経験もあって強く思うのだという。高倉健さんと12年「あなたへ」、菅原文太さんとは03年「わたしのグランパ」で共演。08年「母べえ」では山田洋次監督の演出を受けた。「国内外問わず、監督が自分の撮りたい絵ばかり撮るのは、すごい問題。カメラばかり見て俳優の心に目を向けてくれない。それは高倉さん、菅原さん、山田監督に教えていただいたことに反する。心が通じていないとダメ出ししてくれた」。

 09年の出演映画「劔岳

 点の記」を見た高倉さんから「よく頑張りましたね」と手紙が届いた。その後「きちんといい仕事を慎重に選んでやってほしい」とも言われた。心に決めたことがある。「正しいと思えるエネルギーが感じられなければ違うよと言える、わがままな俳優になりたい」。

 高倉さんが旅立った翌年の主演男優賞。「『まだまだ頑張れよ』と言われた気分です」。【村上幸将】

 ◆ブルーリボン賞

 1950年(昭25)創設。一般紙が主催も61年脱退。67~74年の中断を経て東京映画記者会主催で75年に再開。「青空のもとで取材した記者が選出する」が名前の由来。賞状に青いリボンが巻かれ、ペンが記者の象徴であることから副賞はモンブランの万年筆。