乃木坂46の妹分、欅坂(けやきざか)46が4月6日にCDデビューした。デビューシングル「サイレントマジョリティー」は、発売初週で26・2万枚を売り上げ、オリコン週間ランキング初登場1位を獲得。これまでHKT48の「スキ!スキ!スキップ!」(13年)が持っていた25万・0枚を上回り、女性アーティストのデビューシングル歴代最高の売り上げを記録した。18日に行われた握手会イベントにはファン1万人以上が集まった。

 なぜ、欅坂46は好調なスタートを切れたのか。乃木坂46と欅坂46の「坂道シリーズ」を担当する日刊スポーツ横山慧記者が解説する。

 欅坂46が売れた要因は、大きく3つある。

 <1>乃木坂46の勢い、<2>「サイレントマジョリティー」という曲の力、<3>センター平手友梨奈(14)の存在、だ。

 <1>乃木坂46の存在

 乃木坂46は昨年、紅白歌合戦に初出場。先月23日発売の最新シングル「ハルジオンが咲く頃」は、現在累計で78・6万枚(オリコン調べ)を売り上げており、グループ最多記録を更新中。12年2月のデビューから順調に売り上げを伸ばし続けている。11年8月に「AKB48の公式ライバル」として結成された乃木坂46は、当時既に大ブレークを果たしていたAKB48の名前を借りる形もあって、大きな注目を集めた。欅坂46も同様で、「乃木坂46に続く坂道シリーズのグループ」「乃木坂46の妹分」として業界でも注目され、期待値は高い。

 一部の雑誌ではデビュー前から表紙を飾り、「週刊プレイボーイ」などの有名誌でも特集が組まれ、「週刊ヤングマガジン」「週刊ヤングジャンプ」でもグラビアが掲載されている。取材のオファーは後を絶たない。「青田買い」「先物買い」のような現象だ。これはメディアだけでなく、ファンにも当てはまる。「結成時から応援していた」というステータスを求め、また、まだファンの人数が限られている時に握手会などでメンバーと接触し、認知されることを狙っている。

 もちろん、メンバーたちも、先輩たちの影響を謙虚に理解しているようだ。小林由依(16)は「乃木坂46さんあっての、今の私たちです」と話している。センター平手友梨奈も「私たちがこんなに恵まれているのは、乃木坂46さんのおかげです」と受け止め、「しっかり感謝をしつつ、負けないような勢いで坂を上っていきたい」と誓っていた。

 <2>「サイレントマジョリティー」という曲の力

 メンバーたちも口々に言うように、メッセージ性が非常に高い。今泉佑唯(17)は「一歩を踏み出す勇気をもらえる曲。1人でも多くの人に聞いていただいて、勇気を出すきっかけになれば」と話す。「他人に習え」で自ら声をあげる者が少ないという若者たちの現状に一石を投じ、自分が「NO」なら「NO」と意思表示するように訴える。米ニクソン元大統領の発言の引用(と思われる)があったりと、今年夏の参議院選挙のテーマソングになってもいいような曲だ。

 戦隊風の制服衣装も含めて、「かっこよさ」を全面に押し出し、乃木坂46のデビュー曲「ぐるぐるカーテン」のような「清楚(せいそ)なかわいさ」と明確な特色を出すことができたのも大きい。ミュージック・ビデオ(MV)で、クライマックスで平手が見せる一瞬のほほえみ以外、笑顔がほどんど見られないことからも、「かっこよさ」へのこだわりが感じられる。ユーチューブでのMV再生数は560万回超。デビュー曲にして、長く語り継がれる代表曲を得られた、と言ってよさそうだ。

 <3>グループ最年少にしてセンターを務める平手友梨奈の存在

 「サイレントマジョリティー」のヒットは、この14歳の存在なくしては語れないだろう。おかっぱのショートカットは見るものたちの印象に残るし、往年のアイドル山口百恵さんにも例えられる低音の歌い出しもキャッチーだ。もともとアイドルファンだったことでも知られるAKB48渡辺麻友(22)も、「サイレントマジョリティー」のMVを見て、ツイッターで「かっこいい~~良い~~センターの子がいい味出してる」「えっセンターの子14歳なの。すごっ。どんな人生歩んできたの」と絶賛している。

 平手は本番に強いタイプだ。昨年8月の欅坂46最終オーディションでは、「星空のディスタンス」を堂々と歌った。立ち会った運営関係者は「アイドルとしての魅力もあるけど、すごくアーティストっぽい。なかなか見つけられない素材がいましたね」と喜んでいた。先月東京・国際フォーラムで行われた初の単独ライブでは、ソロ曲「山手線」を披露。流れるようなダンスでファンを魅了したが、実は、十分なリハーサル時間がなく、サビの部分以外は即興で振り付けをして踊っていたという。今後もあえて振り付けを1つに決めないとし、「これからも、ライブやイベントによって違う『山手線』を見てほしいです」と笑う。舞台度胸は十分だ。

 もちろん、平手の他にも魅力的なメンバーが多く、アイドル界屈指のルックスレベルと細いスタイルの面々が集まった。スタートダッシュを決めた欅坂46は4月22日にはテレビ朝日系「ミュージックステーション」にも初出演する予定。AKB48や乃木坂46に比べ全国的な知名度はまだまだだが、勢いはしばらく続きそうだ。「アイドル戦国時代」と言われて久しいが、21人組の大型新人は大きく勢力図を変える可能性を持っている。【横山慧】