今年は連合赤軍事件や沖縄の本土復帰、そして日中国交正常化50年。節目の年である。そんなとき、毎日新聞が「日中50年」企画で〈帰国3世「中国ルーツ」葛藤〉の見出しで意義深い調査結果を掲載していた。

帰国3世とは戦前、満蒙開拓団として中国に渡ったまま取り残され、国交正常化後やっと帰国した残留邦人の孫にあたる人たちだ。記事を読みながら、その少し前に、知り合って約40年になる伊藤春美さんと久しぶりに会ったことを思い出した。

春美さんは父が残留邦人だった帰国2世。がんばって中国語、日本語のほか英語も身につけ、自身は仕事一筋。話題の中心はかわいがっている帰国3世で高校、中学生のおいやめいの受験サポートだ。この子たちの将来に夢をふくらませている。

そんな春美さんたちの姿を裏付ける数字が毎日新聞の調査にあった。帰国3世の大学、大学院進学率は日本全体の大学、短大進学率58・9%に迫る勢いだという。言葉や就労の壁がある中、がんばって子供に教育をつける2世の姿が目に浮かぶ。

一方で自分のルーツを周囲に話せなかったり、隠したことがある人は30代で7割に上った。その理由は全世代通じて「1から説明してもわかってもらえない」が多く、「いじめられる」「恥ずかしい」を挙げた人もいた。

これは3世にとっても日本社会にとっても不幸なことではないか。今年はロシアのウクライナ侵攻もあって、かつての日本の中国大陸侵攻がたびたび取り沙汰された。だからこそ残留邦人も2世3世も声を上げ、私たちもしっかり耳を傾けながら、併せて歴史を知る。そんな日中50年、実りある節目の年に、と願っている。

◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)ジャーナリスト。TBS系「ひるおび!」東海テレビ「NEWS ONE」などに出演中。