突然営業を取りやめた振り袖の販売・レンタル業者「はれのひ」が、成人式の日に着付けをするはずだった横浜市港北区のホテルでは、同業者の「ふりそでシミズ」が約50人の着付けを代わりに引き受けた。東日本大震災で自宅が半壊した清水雅昭社長(55=福島県いわき市)の「困っている人を助けるのは当然」との思いから。「(震災後)人から手を差し伸べられるうれしさを肌で感じた。何か恩返しをしないと、と心に刻んできた」。着付けの代役を買って出た。

 式典前日の7日夜、はれのひは予定していた振り袖の搬入に姿を見せなかった。「ただごとではない」。ホテル側は同じ会場で着付けをする同業者に手助けを求め、その場に来ていた清水社長は当日のパニックを懸念。すぐさま新たに、ヘアメークや着付けのスタッフ10人を手配した。

 翌8日早朝から、はれのひが着付けをするはずだった新成人がホテルに集まってきた。泣きだす人や放心状態になる人が続出。式典まで時間が限られていたため、清水社長は振り袖や道具がそろっている新成人に優先して声を掛けた。数人は近くの店舗に案内し、無償で振り袖を貸した。無事に振り袖を着られた新成人は、悲しみの涙がうれし涙に。清水社長は「つらい経験を糧に、大人としての1歩を踏み出してほしい」とエールを送った。