ロシアのプーチン大統領は12日、極東ウラジオストクでの東方経済フォーラムで、安倍晋三首相に対し、一切の前提条件を抜きにして今年末までに日ロ間で平和条約を締結するよう求めた。さらに「その後、全ての係争中の問題を解決しよう」と呼び掛け、北方領土問題を事実上先送りする姿勢を見せた。同フォーラム全体会合の討議で発言。首相が条約締結を強く迫ったことに反発し、異例の発言となった可能性がある。

プーチン大統領が、「一切の条件抜き」での年内の日ロ平和条約締結に言及した。大きな進展がみられず、膠着(こうちゃく)状況が続く日ロ交渉に不満を募らせ、日本に決断を促す思惑がにじむ。

安倍首相が全体会合で「平和条約締結に向けた私たちの歩みを、ご支持ください」と呼び掛けると、大きな拍手を浴びた。日本がロシアに実施している経済協力が各地で成果を上げていることを、映像を使って説明。日ロ両国が平和条約を締結すれば、両国関係がさらに発展すると訴えた。

プーチン氏の異例の発言が飛び出したのは、この後。「年内に前提条件なしに、平和条約を締結しよう」。歯舞、色丹2島の引き渡しを盛り込んだ1956年の日ソ共同宣言の実行を日本側が一方的に拒否したと不満を表明した後、唐突に「今、思いついた」と語った。首相の演説に聴衆が好意的に反応したことに、いら立ちを覚えた可能性がある。司会者から改めて問われ、「冗談で言ったわけではない。いつか全ての問題を解決できると信じている」と述べ、領土問題は時間をかけて解決するべきだとの考えも示した。

今回の発言の背景には、ロシア政府が6月に年金受給年齢の引き上げ案を発表した後、プーチン氏の支持率が急落したことも影響したとみられる。外交筋は「強いロシアを演出し、求心力を回復したい思惑があるのは間違いない。その一環だろう」と解説する。

ある日本政府高官は、プーチン氏の発言に「反応するべきではない」と強調。10日の日ロ首脳会談で平和条約の締結時期に触れなかったのに、突然言い出したことへの不信感もある。日本政府関係者は「国境線が画定しなければ平和条約は結べない」と断言した。プーチン氏はこれまでに「北方領土は第2次大戦の結果、ロシア領になった」と主張。平和条約締結と領土問題は別との考えを示してきた。