賃金や労働時間の動向を把握する厚生労働省の「毎月勤労統計」の不適切調査問題で、厚労省は11日、雇用保険の失業給付や労災保険などの過少支給の対象者は延べ1973万人で、総額は537億5千万円に上ったと明らかにした。一連の問題は総務省の指摘を契機に明るみに出たが、厚労省担当職員らは、それ以前から不適切と認識しながら、組織全体で情報を共有せず、放置していた。過少支給のあった全対象者に不足分を追加支給する。

根本匠厚労相は記者会見し「極めて遺憾で、国民の皆さまに心からおわび申し上げる」と謝罪した。事実関係を調査した上で関係者の処分を含めて対応したいと述べた。組織的な隠蔽(いんぺい)は否定した。勤労統計は労災保険の算定基準や政府の経済指標などに幅広く用いられる「基幹統計」。信頼性が根本から揺らいでいる。

菅義偉官房長官は会見で、不適切調査問題を受け、昨年末に閣議決定した2019年度予算案を修正する方針を表明。「雇用保険などを過去にさかのぼって追加給付する必要がある。必要な予算を計上する方向で調整する」と述べた。これに関し、麻生太郎財務相は予算案の閣議決定を「やり直す可能性は極めて高い」との認識を示した。

過少支給の内訳は、雇用保険が延べ約1900万人、金額は約280億円。労災保険は年金給付が延べ約27万人で約240億円、休業補償が延べ約45万人で約1億5千万円。船員保険は約1万人で約16億円だった。さらに、事業主に支払う雇用調整助成金でも過少支給が約30万件、約30億円分あった。

勤労統計は厚労省が都道府県を通じて行い、従業員500人以上の事業所は全て調べるのがルールだ。しかし東京都内で該当する約1400事業所のうち3分の1程度しか調べていなかった。こうした調査手法は04年から始まり、適正に調査した場合に比べ平均給与額が低く算出されていた。

さらに、少なくとも1996年からは調査対象として公表していた全事業所数より約1割少ない事業所数しか調べていなかった。(共同)