日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告(64)が、16年にベルサイユ宮殿(フランス)で開いた結婚披露宴で、会長兼最高責任者(CEO)を務めていたフランス自動車大手ルノーの資金を不正に使った疑いがあるとして、同社は7日、司法当局に通報することを決めたと発表した。ゴーン被告は日産では多くの不正疑惑が浮上しているが、ルノーでも不正を行った初の例となる可能性がある。

ゴーン被告は16年10月、キャロル夫人(52)との再婚の披露宴をベルサイユ宮殿内の離宮、大トリアノン宮で開いた。当時の現地紙などによると、式はソフィア・コッポラ監督の06年の映画「マリー・アントワネット」にインスピレーションを得た豪華絢爛(けんらん)なものだった。18世紀の衣装を着たエキストラが登場し、銀やクリスタルの食器にフルーツやケーキが盛られ、世界中から約120人の客が訪れた。ゴーン被告とキャロル夫人を「王と王妃」と報じるメディアもあった。

その結婚式に疑惑が浮上した。フランス紙フィガロによると、式に先立って16年6月にルノーとベルサイユ宮殿の間で、企業が芸術文化を支援する事業「メセナ」の契約を結んだという。金額は230万ユーロ(約2億8750万円)で、宮殿修復を目的としてゴーン被告が支出を判断する会計から支払われた。ルノーはベルサイユ側から最大25%分までの対価を得られることになっていたといい、見返りのサービスの1つとして、宮殿の無償使用が認められた。

ルノーは発表で「ベルサイユ宮殿とのメセナ契約の枠内で、5万ユーロ(約625万円)相当の対価がゴーン氏の個人的利益として与えられていた」と指摘。さらに詳しく調べる必要があるため、当局への通報を決めたとしている。

同社は日本でゴーン被告が逮捕された昨年11月から内部調査をしており、その過程で今回の疑惑が見つかったという。ルノー筆頭株主であるフランス政府のルメール経済・財務相は7日、「私たちは完全な透明性を望む」と述べた。

ベルサイユ宮殿は修復費用などを得るため、建物や部屋ごとのレンタルを行っている。04年に宮殿全体を貸し切って行われたインドの富豪の結婚式費用は総額70億円超ともいわれる。日本の旅行代理店でも貸し切り観光ツアーなどがある。

◆ベルサイユ宮殿 パリの南西約20キロに位置するバロック建築の代表作。1624年にルイ13世が狩猟用の離宮として建築した。1600年代後半にルイ14世が豪華な庭園、噴水などを増築。1682~1789年は国王が住む宮殿となり、絶対王政の象徴となった。大トリアノン宮はルイ14世の愛人の住居。小トリアノン宮はルイ16世の王妃マリー・アントワネットの住んだ離宮で、母国オーストリア風の集落や劇場を作ってこもり、宮殿の窮屈な生活から逃れたとされる。第1次世界大戦講和のベルサイユ条約は、鏡の間で調印された。1979年に世界遺産(文化遺産)登録。