東京電力福島第1原発事故で飛散した放射性物質を含むガラス状の微粒子「セシウムボール」は、水に溶けにくく環境中に長期間残存するとされていたが、水中では長い時間をかけて溶けるとの研究結果を東京大などのグループがまとめ、英科学誌電子版に発表した。

グループの小暮敏博東大教授(鉱物学)は「事故から8年が経過して海で溶解が進んでいると思うが、福島沖の海水中の放射性物質濃度は検出下限値より低いので環境への影響はないと考えられる」と話した。

セシウムボールは、第1原発の炉心溶融(メルトダウン)に伴って原子炉内で形成されたとみられる。大きさはスギ花粉よりさらに小さい数マイクロメートル程度。ケイ酸塩ガラスでできているため水に溶けにくいとされ、吸い込んだ場合の内部被ばくの影響を懸念する指摘がある。

東大などは、原発事故時に屋外に置かれていた農業資材からセシウムボールを採取し、海水と純水に漬けて水温を変えながら溶ける速度などを調べた。純水よりアルカリ性が高い海水の方が速く溶ける傾向があり、福島市の年間平均気温にあたる13度では、半径1マイクロメートルのセシウムボールが海水で10年程度、純水では70年程度で完全に溶けると計算された。

海水で溶かす実験中のセシウムボールを電子顕微鏡で確認したところ、ガラスの成分が溶け出すことによってサイズが小さくなり、粒子の表面に水に溶けない鉄やスズの酸化物がみられた。(共同)