名古屋市のホテルで昨年7月、覚醒剤が含まれた水溶液を知人の20代男に注射してもらったとして、覚せい剤取締法違反(使用)の罪に問われた同市の飲食店従業員の50代女性に、名古屋地裁は12日、「男の暴力に恐怖心を抱き、拒絶できなかった可能性を否定できない」として、無罪判決を言い渡した。求刑は懲役1年6月。

公判で弁護側は無罪を主張。検察側は「男の望むことをしてあげたく、注射した」との供述がある検察官調書を証拠提出したが、岩田澄江裁判官は取り調べの録音録画DVDを検討し「女性が(検察官の取り調べで)繰り返し述べた男からの暴力や恐怖心の記載が調書にはなく、供述を正確に記録したものではない」と信用性を否定した。

岩田裁判官は判決理由で、女性が犯行前の約2カ月間、男から殴る蹴るなどの激しい暴行を複数回受け、暴力を避けるため男の金銭要求に応じ計約1千万円を渡していたと指摘。

男の勧めで覚醒剤を使用した当時は「男の意に反する行動を取ることが困難な心理状態で、主体的な意思を有したとみるのは困難だ」と述べた。

女性は昨年7月、男から暴力を受けたと助けを求めるメールを家族に送信。家族からの行方不明届を受け行方を捜していた愛知県警に同法違反容疑で現行犯逮捕された。(共同)