ソフトバンクから機密情報を不正に引き出したとして、警視庁公安部は25日、不正競争防止法違反の疑いで同社元社員荒木豊容疑者(48=千葉県浦安市)を逮捕した。在日ロシア通商代表部の情報機関員とみられる職員に渡った疑いがあり、公安部は、ロシアによるスパイ活動事件として全容解明を進める。

警察当局は外務省を通じ、在日ロシア大使館に対し、機密情報を受け取った疑いのある50代の職員の男と、2017年に帰国した40代の元職員の男を警視庁に出頭させるよう要請した。

捜査関係者によると、荒木容疑者と接触し始めたのは元職員で、後任の現職員に引き継いだとみられる。現職員は外交官の身分を持っているという。公安部は、荒木容疑者が複数の情報を繰り返し提供していた可能性があるとみて調べている。

逮捕容疑は昨年2月18日、当時勤務していたソフトバンクのサーバーにアクセスし、営業秘密になっていた機密情報など2点を不正に取得した疑い。

捜査関係者によると、情報は記録媒体に入れて手渡し数十万円を受け取っていた。「小遣い稼ぎのためで、現金をもらったことがある」などと容疑を認め、情報を渡したとの趣旨の話もしているという。

ソフトバンクによると、引き出したとされる情報は、電話の基地局など通信設備に関連した作業手順書。業務のプロセスを効率化する内容などが含まれている。荒木容疑者は通常の業務の中で閲覧可能だった。

同社は昨年12月中旬に荒木容疑者を懲戒解雇した。ホームページで「ご心配とご迷惑をおかけし深くおわび申し上げます」「持ち出された文書は機密性が低く、客の個人情報や通信の秘密に関わる情報、取引先に関する情報は含まれていない」などとするコメントを発表した。

在日ロシア通商代表部は東京都港区にあり、ロシア大使館の関係組織。日本とロシア間の貿易の支援業務などをしている。

不正競争防止法は企業が秘密としている情報を不正に持ち出す行為を禁じている。公安部によると、ソフトバンクは逮捕容疑となった情報を社外秘としていた。(共同)