新型コロナウイルスの感染拡大の影響で外出自粛や在宅勤務による「ステイホーム」が長引く中、飲酒量の増加やアルコール依存症の悪化が懸念されている。外部からの歯止めが利きにくい状況となり、関係団体への相談も増加。専門家は「日々の飲酒量を記録して見返すだけでも抑制的になれる」と呼び掛ける。

▽危機感

「在宅勤務で昼から飲んでしまう」「仕事が今後どうなるのか不安で酒量が増えた」。依存症治療の施設運営などを行うワンネスグループ(奈良県大和高田市)には本人や家族から電話やメールによる連絡が相次いでいる。三宅隆之共同代表は「3月下旬に外出自粛が始まって以降、相談が増えた」と危機感を募らせる。

治療の一環として依存症当事者が集まる自助グループの会合も、会場の施設が閉鎖して開けない。酒をやめようと取り組んでいた人が再び飲み始めるケースもあり、悪循環が生まれている。

行動が制限される中でもできることに目を向けようと、ワンネスグループは「飲酒量を減らすためにできる10のこと」を提言。家でも身だしなみを整えることや、飲酒のメリットとデメリットを書き出すことなどを挙げた。家族の支援も重要といい、三宅さんは「頭ごなしにとがめず、なぜお酒を必要としているのか、心情に気を配って関わってほしい」と語る。

オンラインでつながろうとする取り組みも。依存症の予防や回復を支援するNPO法人アスク(東京都)では、チャットルームを開設した。自助グループに参加したことがない人や家族も交流できる。今成知美代表は「依存症の人には孤立が一番危ない。つながりを絶やさないために、今はこの方法しかない」と話す。

▽ルール化を

「多量飲酒していても、朝起きて仕事に行くことで持ちこたえてきた予備軍の人たちが、依存症に近づく危険がある」と指摘するのは大船榎本クリニック(神奈川県鎌倉市)の斉藤章佳精神保健福祉部長。生活パターンが変化して飲酒開始時間が早まった結果、酒量が増える恐れがある。

対策として「飲む量や時間について、事前のルール作りが重要」と強調する。家族など他者とルールを共有するのも有効だ。普及が進むオンライン飲み会も、終電や二日酔いを気にせずにだらだら飲みがちになるため、同じ工夫が必要となる。

アルコール度数の低いものを選んだり、飲むスピードを遅くしたりするだけでも飲み過ぎを抑えられる。斉藤さんは「孤独や不安といった否定的な感情を手っ取り早くお酒で解決しようという動機は問題飲酒になりやすい。今こそ人とのつながりを再確認し、お酒以外の頼れる先を多く持ってほしい」と呼び掛けた。(共同)