政府は29日、東京都での新型コロナウイルス感染者が増加傾向にある中、緊急事態宣言の再発令への慎重姿勢を明確にした。再開に向けて踏み出した社会経済活動への配慮のためだ。政府は山中伸弥・京都大教授らをメンバーとし、感染防止策を検証する新たな専門家会議の初会合を7月1日に開催。ホストクラブなど「夜の街」対策といった流行の第2波への警戒を強化する。東京都の感染者は4日連続で50人を超え、全国でも2日続けて100人を上回った。

菅義偉官房長官は記者会見で「感染防止策と、社会経済活動の両立を持続させるのが主眼だ」と述べた。ただ専門家の間には東京都の現状に関し「赤信号の一歩手前の黄信号だ」との見方もある。今後も感染者が右肩上がりに増えれば、政府が対応に苦慮する可能性も否定できない。

東京都では5月25日の緊急事態宣言解除後、感染者が増加し、6月2日に都独自の「東京アラート」を発表。11日に解除したが、28日には宣言解除後最多の60人、29日も58人が報告された。埼玉県の大野元裕知事は同日、都内での飲食や繁華街への外出自粛を県民に呼び掛けた。

西村康稔経済再生担当相は28日の会見で「緊張感を持って対応したい」と表明した。政府は、感染者の大部分は「夜の街」やカラオケ関連で、市中感染には至っていないとの立場。関係者は「景気回復への流れを止めたくない」と説明した。西村氏は30日、小池百合子都知事と会談し「夜の街」対策を協議する。

舘田一博・東邦大教授(感染症学)は、市中感染が広がれば「感染者が多い地域は再宣言が必要になるのではないか」と指摘する。

政府の基本的対処方針は再発令の基準として、直近の新規感染者数などを「総合的」に判断すると定めている。ただ具体的な数値は示しておらず、曖昧さは否めない。

新たな専門家会議は、国会事故調査委員会で東京電力福島第1原発事故の原因究明に取り組んだ黒川清・政策研究大学院大名誉教授を委員長に、iPS細胞開発でノーベル医学生理学賞を受賞した山中教授らで構成する。(共同)