過酷事故を起こした東京電力福島第1原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含む処理水を巡り、政府が月内にも海洋放出を決定する方針を固めたことを受け、福島県の漁業関係者からは16日、「これまでの努力が無駄になる」「海洋放出には反対」などと懸念する声が上がった。

福島県沖では事故直後、全面的に漁を自粛。2012年6月に海域と魚種、操業日などを絞った試験操業が始まった。東日本大震災後に漁師になった相馬市の男性(32)は「風評対策など努力が無駄になってしまうのではないか」と不安を吐露する。魚は種類ごとに1検体を抽出し検査した上で出荷しているが、「海洋放出後に1匹でも基準値超えが出たら、信用は地に落ちるという恐怖と隣り合わせだ」と訴えた。

いわき市の漁業会社の男性(69)は「試験操業を続けてきてようやく福島の魚の安全性が認知されてきたのに、処理水を流されては台無しになってしまう。海に流すことには反対だ」と語気を強めた。

一方で、諦めにも似た声も。いわき市の漁師(80)は「原発事故からもう10年。海洋放出は仕方ない」と話し、「雨や地下水が原発構内に流れ込んでいるのに処理水をタンクに入れて間に合うはずがない。無理があったんだ」と語った。

福島同様、震災で被災した宮城県でも反対の声が出た。石巻市の牡鹿漁協の渡辺玲参事(59)は「放出には反対だが、現実問題どうするかと言われると難しい」とした上で「安全は担保されるというが、消費者側がどう受け止めるかが問題だ」と心配する。(共同)