1970年に東京・市谷の自衛隊駐屯地で割腹自殺した作家三島由紀夫が直前に企画し、写真家篠山紀信さん(79)が撮影を終えながら、事件後お蔵入りとなった写真集「三島由紀夫 男の死」(原題・YUKIO MISHIMA THE DEATH OF A MAN)が、11月の三島の没後50年を前に米国で出版された。日本版刊行は現時点で未定という。

決闘に敗れた剣士、切腹する侍、競技中に絶命した体操選手らに三島自らが扮(ふん)し、独自の美意識を表現した“幻の写真集”が、半世紀を経てようやく日の目を見た形だ。

版元の米リッツォーリ社によると、撮影は11月25日の「三島事件」の数日前まで続いたという。刊行の準備も進んでいたが、事件の余波で見送られた。

ところが昨年、同社の編集者が三島の遺族と面会した際に、出版を打診されたという。担当したイアン・ルナさんは共同通信の取材に「暴力と軍国主義への賛美を様式化した本書が論争を起こしかねないことは承知しているが、没後50年を前に三島作品への関心が日本でも北米でも再燃している今が刊行の好機と考えた」と回答した。

三島は篠山さんの写真を「滅亡の予感のやうなものが表情に与へられてゐる」と高く評価していた。写真集での「共演」を三島に打診された美術家横尾忠則さん(84)は今回、巻頭にエッセーを寄せ、篠山さんは「三島の言う通りに写真を撮った」と振り返っている。篠山さんのコメントは収録されていない。

当時、横尾さんは病気で撮影には参加しなかったが、写真集について「創作と呼んでいいのか、事件と呼んでいいのか、ドキュメントなのかフィクションなのかさえ、私には判断がつかない」「『何か』とんでもないものが表現されていた」とつづっている。(共同)